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本紙報道で1年間を振り返る ニュースダイジェスト 2022年3月―2023年2月

2023.03.16

目次

新型コロナウイルス
ウクライナ支援
国際卓越研究大学
吉田寮訴訟
立て看板問題
遺骨問題
OCW
硬式野球部
11月祭
熊野寮祭



新型コロナウイルス


課外活動・施設利用 制限緩和進む


感染症拡大により20年4月から続いている課外活動の制限について、段階的に緩和が進められた。体育会と応援団は昨年4月、新入生勧誘のビラを配布する「ビラ紅萠祭」を前年に続いて開催し、大学は21年に不可とした非公認団体の参加を認めた。6月には課外活動における参加人数と活動時間の制限を撤廃し、部室について「一時的なものおよび課外活動掛が認めた場合」に利用可能としたほか、公認団体の活動のみを認めるとした方針を改め、非公認団体に対し課外活動マニュアルに「準じて活動」するよう求めた。今年2月には他大学の学生の活動参加や、「少人数かつ短時間」の飲食を伴う懇親会の実施を認め、部室の利用条件を「密にならない人数」で「十分な換気」を行うこととし、事実上緩和した。一方、公認団体に「活動計画書」の提出を引き続き求めるほか、北部グラウンドなどの学内施設の貸し出しを公認団体に限るなどの制限は継続している。

学内施設の利用も制限緩和の動きを見せる。附属図書館は10月1日から、図書館の閉館時刻と同時に閉室していた「学習室24」の深夜開室を再開し、月曜から木曜まで翌朝の8時30分まで利用可とした。同月末には法経本館西ウイング地下(J地下)にある部室スペースについて、J地下を利用する各団体と法学部教務掛の協議を経て、平日7時から21時の間に限り利用が再開された。共用部であるピロティは引き続き閉鎖されており、法学部自治会は11月時点で「交渉を継続する」と説明した。

授業は前期・後期共に対面を原則として実施した。23年度前期も対面授業を原則とし、昼休みの15分延長を継続すると発表している。

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J地下 部室スペース利用再開 ピロティは引き続き閉鎖(同年11月16日)
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ウクライナ支援


留学生受け入れ 学習支援


昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻をふまえ、4月以降、京大はウクライナ人留学生の受け入れを実施し、学費の免除や生活補助などの支援を進めた。

昨年3月8日、京大は侵攻について声明を出し、ウクライナの大学や学術機関の関係者に対して「学生の受け入れ等最大限の便宜を図る」と表明した。

4月6日には支援策を発表した。対象は2013、14年に京大と学術交流協定を結んだキーウ(キエフ)⼯科⼤学とタラス・シェフチェンコ記念キーウ国⽴⼤学の2校で、授業料などの免除や、渡航費や生活支援の提供を政府に働きかけた。また同月20日、ウクライナからの学生全員に住宅を1年間無償で提供するとし、京都市内に本社をおく株式会社・学生情報センターの申し出により住宅の提供が実施された。

6月22日には1人目の留学生が到着、学部生として学修を開始した。この学生は後続の留学生と同じく、特別聴講学生または特別研究学生として国際高等教育院で受け入れられた。京大での学修期間は1年間を想定しているが、必要に応じて延長する。また4月に設立された「ウクライナ危機支援基金」には、6月28日時点で約1100件、約4200万円の支援が集まり、月額8万円の奨学金給付に使用されている。

京大はこれら経済的な支援のほか、留学生相談室の紹介や各々の学生につくアドバイザー、留学生ラウンジ「きずな」にウクライナ人スタッフを常駐させるなど精神的なケアも図ってきた。10月26日には百周年時計台記念館でウクライナ学生歓迎セレモニーを開催し、湊総長は京大が4月以降に受け入れたウクライナ学生14名らへ歓迎と支援継続の意思を示した。

ウクライナ留学生の歓迎会



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国際卓越研究大学


数百億円規模の支援 反対の声も


国際卓越研究大学制度を定めた法律が11月15日に施行された。湊長博総長が2023年年頭挨拶で「果敢に挑戦していく」と宣言するなど、京大は申請への準備を進めているとみられる。同制度は、論文数などの基準を満たして認定された数校の大学に対し、10兆円規模の大学ファンドから1大学あたり年間数百億円を政府が支給するもの。一方、大学に制度改革や事業成長を課し、学外者が半数以上を占める、総長の人事権を持つ合議制機関も設置させる。

ファンドの運用に伴うリスクや大学自治の観点から、申請に反対する声も出ている。法案が国会へ提出された4月には、京大の教員らが呼びかけ人を務める「稼げる大学法案の廃案を求める大学横断ネットワーク」が同法の廃案を求める約1700名分の署名を総理大臣宛てに提出した。その後もインターネット上での署名活動を続けており、2023年3月時点で約1万8千人の賛同を得ている。また、京都大学職員組合は12月に記者会見を開き、教員や学生が個人として参加できる説明・意見交換の場を設けることを大学に求めている。

国際卓越研究大学の公募は昨年12月に始まっており、申請は今年3月末まで。卓越大の選定は今年秋にも行われる見通し。京大は申請について「理事・部局長らで検討しており、申請前に議事を学外に公開する予定はない」とした上で、最終的な申請の可否は「所定の学内会議に附議し決定」するとしている。

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吉田寮訴訟


京大が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生を提訴した問題で、2022年には第11回弁論から第15回弁論が行われた。裁判は19年4月から続く。京大および寮生双方の主張はすでに出揃っており、3月現在、訴訟は証人尋問の段階にある。

確約や老朽化めぐり平行線辿る


第11回弁論から第13回弁論では、大学と寮との間の確約の扱いや現棟の老朽化の度合いなどが主な争点となった。

大学と寮自治会との確約について、被告・寮生は「大学と寮との約束」との見解を示した一方、原告の大学側は「副学長の個人的な約束事」と主張し、「(大学が確約に)従う義務はない」としている。さらに、大学側は大学と寮生との契約が、貸主に補修の義務がない使用貸借契約との認識を示し、老朽化は在寮契約を解除する「やむを得ない事由」にあたる、とした。

また、建物の老朽化をめぐり、被告らは現棟が「朽廃には至っていない」としたうえで、「補修すれば居住可能」としており、老朽化は「大学が補修の義務を怠った」ことで生じたと説明した。一方、原告は倒壊の危険性を強く指摘しながらも「補修の義務はない」との姿勢を崩さず、被告らが「建物を占有」しているため老朽化対策が検討できないとして、改めて寮生の退去を求めた。

寮自治会 現棟屋根の自力補修実施


9月には、寮自治会が18年の台風で欠損した現棟屋根の自力補修を行った。大学は同年以来、寮自治会による再三の補修の求めを拒み続けている。8月の補修要求に対して大学は、ブルーシートの設置など応急処置は検討するものの「補修を行うことはない」と回答したうえで、「許可なく補修は認めない」とした。これについて寮自治会は「維持管理の責任を放棄している」と強く抗議し、屋根瓦の葺き替えといった修繕を自主的に実施した。

裁判官の訪寮実現今春審理終結へ


第14回弁論と第15回弁論では、最終弁論に向けた調整を行った。第14回弁論において、被告は証人の候補として▼寮関連の学内委員(当時)▼提訴に向けた手続き執行当時の厚生課職員▼被告寮生を申請した。また、この弁論では10月末に裁判の進行協議を吉田寮現棟で行うことを決め、10月26日に裁判官による吉田寮現棟の視察が実現した。第15回弁論では原告・被告双方が尋問の時間や、陳述の順番などを決定した。

現在、訴訟は最終弁論の段階にあり、先月27日に行われた証人尋問で、証人3名による陳述を既に終えている。今月27日の尋問をもって証人尋問が完了し、審理が終結する。この春には結審となる見通しだ。

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立て看板問題


京大がキャンパス周辺の立て看板を撤去したことを巡り、大学の職員組合が2021年4月に京大と京都市を相手どり提起した訴訟で、2022年度には第3回から第8回の口頭弁論が京都地裁で開かれた。

条例の解釈めぐり見解分かれる


大学周辺の立て看板を巡っては、京都市が2017年10月に屋外広告物条例に違反するとして京大を行政指導した。これを受け京大は18年5月に立看板規程を施行し、設置基準に反する看板を一斉撤去した。その一環で組合の立て看板が事前通告なしに撤去されたとして、21年4月に組合は表現の自由や組合の団結権の侵害を訴え市と京大を提訴した。550万円の損害賠償を求めている。

21年度の口頭弁論では、被告が立て看板が景観を害しているとしたことについて、職組は立て看板が地域独自の景観を形成してきたと反論。また、大学周辺は表現の自由をできる限り保障するべき「パブリックフォーラム」にあたるとした。一方で大学は、条例は憲法に違反せず、撤去は施設の管理権に基づくため不当性はないと主張していた。

22年の2月と5月に行われた第3・4回弁論で原告は、広大な大学構内を一区画として広告面積の上限を適用するのは「過大な制約」と主張。これに対して市は、構内の通路は「道路」にあたらず、構内を区画に分割することはできないと反論した。

7月の第5回弁論では京都市条例の広告面積規定の解釈が争点となった。京大は、総合博物館の壁面ポスターのみで区画の広告面積の上限を超えるため、職組の立て看板を設置することはできないとしている。これに対し職組は、条例では「独立型」と「定着型」の広告物に対して建物ごとの合計面積の上限を定める一方、区域ごとの合計面積を制限する条文には「定着型」が含まれていないことを指摘。さらに博物館の掲示も組合の看板も「定着型」にあたるとし、京大の主張を「誤った解釈」と批判した。

職組 行政文書公開を求め新争点


原告はこれまでの弁論で、市が大学に行った行政指導について、交渉記録の開示を求めてきたが、被告はこれを拒んでいる。裁判長は争点に直結しない文書を送付嘱託することはできないとして、開示の必要性について判断を保留していた。11月の第7回弁論で組合は、市と大学が条例の解釈・適用を恣意的に変更して組合の活動を妨害したという旨を新たに主張し、文書開示を再び要求した。この争点について裁判長は、原告側と被告側には事実の認識に相違があると認め、被告側は何らかの方法で条例の解釈が変化していないことを立証する必要があるとした。

第8回弁論後の報告集会



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遺骨問題


琉球遺骨 一審原告敗訴 控訴審へ


京大が保有する琉球民族の遺骨の返還を求める裁判が2018年から継続している。昨年4月21日には、京都地裁が原告側の主張を退ける判決を言い渡した。原告側はこれを不服とし、控訴した。控訴審では、原告側は収集当時の琉球新報に遺骨返還に言及した記述があると指摘。京大総合博物館での現地調査も求めた。一方で、京大側は記述の内容を否定し、現地調査についても拒否した。

訴訟は、京都帝国大の金関丈夫氏らが、1929年に沖縄県今帰仁村の百按司墓から持ち出した遺骨について、墓に埋葬されていた王家・第一尚氏の子孫や松島泰勝・龍谷大教授ら原告4人が返還と損害賠償を求めて2018年12月に提起した。原告側は、遺骨の収集や保管の違法性を指摘する一方、京大側は当初から違法性を否定してきた。

4月21日の判決では、京都地裁は「祖先の遺骨を百按司墓に安置して祀りたいという心情には汲むべきものがある」としたが、京大の遺骨の管理は「不適切とはいえない」として、原告側の主張を退けた。また、国際人権規約や憲法は遺骨の返還を請求する具体的権利を保証していないと指摘した。さらに、不特定多数の追慕者が返還を請求できると解釈することは認められないとした。判決を受け、原告側は大阪高裁に控訴した。

控訴審は9月から3度開かれており、原告側は遺骨収集当時の琉球新報に「引き取り人が現れれば返還する」とした記載があると指摘して改めて遺骨の返還を要求した。また、総合博物館に保管されている遺骨の状況について検証を行うことを求めた。しかし、京大側は当該記述については、そのような約束をしていないと否定し、検証も拒否した。一方で、保管状況を撮影して写真を提出することを検討するとしている。

第一審判決の翌日の抗議集会



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アイヌ遺骨返還応じず 警察導入も


京大が保管するアイヌ民族の遺骨について、アイヌ民族などで作る5団体が昨年9月21日、京大本部棟前と総合博物館前で申し入れを行い、返還を求める要望書を提出した。職員が入館を拒み、どちらも建物玄関前での申入れとなった。博物館前での申入れの最中、警備員と警察官が出動。参加者が警官導入について抗議すると、馬渕事務長が謝罪した。大学は本紙の取材に対し、「来館者の安全確保」のため警備会社に連絡したところ、警備会社が警察へ通報したと答えた。

11月17日にも当該団体が遺骨の返還を求める申し入れを行った。要望書の中で、9月の申し入れの際に警察が出動したことに触れ、参加者の行動は「安全を脅かすものではなかった」としたうえで「通報は不当」と訴えた。

京大の調査に基づいて文科省が公表している資料によれば、医学部教授が1924年に樺太、26年に釧路市で墓を掘り返すなどして87体を収集し、総合博物館に収蔵した。2019年にはうち26体を北海道白老町の「慰霊施設」へ移管し、残り61体の保管を続けている。13年に保管実態の調査結果が公開されて以降、返還と謝罪を求める申し入れが続いている。

9月に提出された要望書に対して大学は、「政府方針に従って対応する」旨を記した19年の文書を指し、「当該文書で回答したとおりだ」と答えるに留まったという。

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OCW


閉鎖一転、新たな基盤を整備へ


京大は昨年8月、OCWのサイトを翌月以降に閉鎖する旨を発表した。しかし、学内外から継続を求める声が上がり、9月には一転して「積極的に発信」していくための検討を開始。1月、新たな基盤「OCW2・0(仮称)」を運用することを発表した。

OCW(オープンコースウェア)は、大学が授業動画などを無償で公開するウェブサービス。2005年、京大を含む6大学が日本で初めて導入した。京大OCWは、授業動画以外にも研究会などの様々な映像や資料を公開しており、ユーチューブチャンネル上に6千本以上の動画と約10万人の登録者を抱えている。

8月4日、京大OCWのサイト上で、▼OCWを管轄する高等教育研究開発推進センターが9月末で廃止されること▼サイトを9月中旬以降に閉鎖することが発表された。

発表を受け、学内外からOCWの継続を求める声が上がった。8月24日には、既存のコンテンツに限り、教務企画課が運用を継続することが決定したが、31日には、センターの機能存続を求める署名が始まり、9月15日時点で1万人以上が賛同した。飯吉透センター長は本紙の取材に、世界の大学で教育DX(デジタル化による変革)が進むなか、センターの廃止決定は「時代に逆行している」と批判した。

しかし大学側は、「一定期間ごとに評価した」結果であると述べるにとどめ、センター廃止に至った具体的な経緯を明らかにしなかった。また、飯吉透センター長によると、OCWを他部局に引き継がない旨を7月に理事から言い渡された際にも、その判断の根拠についての説明はされなかったという。

こうしたなか、9月16日、京大はOCWを「より質の高いものとして積極的に」発信するため、年内に結論を出すことを目指し全学的な検討を開始したと発表した。閉鎖発表からの方針変更について大学は、「学内の意見を参考に検討した結果」と答えた。

10月には、京大情報学研究科の学生有志が、京大OCWの代替サイト「OCW Central」を公開した。講義音声の自動書き起こしなど、京大OCWには無い機能も利用でき、京大OCWの利用規約などにも抵触しない。飯吉・元センター長は「京大らしい素晴らしい動き」「大学執行部はこのような自助的な努力や新たなアイデアも活かして検討してもらいたい」などとコメントした。

1月17日、京大は、新たな基盤「OCW2・0(仮称)」を運用すると発表した。京大は本紙の取材に対し、従来のOCWは「公開する動画の趣旨、目的が明確でなかった」と指摘し、OCW2・0では高校生や社会人などをターゲットにした講義を中心に配信すると回答した。また、検討の余地は認めつつも、通常講義の映像は基本的に配信しないとした。既存の動画などは削除しないという。

従来の京大OCWと「OCW2・0」の比較



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硬式野球部


春・史上最多タイ5勝など奮闘


京都大学硬式野球部は2022年度、6チームが所属する関西学生野球連盟で、春季リーグ5位、秋季リーグ6位という結果に終わった。しかし、特に春季リーグでは、史上初となるAクラス入り(3位以上)の可能性を最終日まで残すなど力闘をみせた。

春季リーグでは4月2日の関学戦で春季リーグ戦8年ぶりとなる勝ち点を獲得すると、勢いそのままに史上最多タイの5勝を挙げ、ベストナインに小田雅貴(工3)、伊藤伶真(総人4)、山縣薫(工4)の3名が選出された。3名のベストナイン選出は歴代最多。また、5月18日の近大戦では梶川恭隆(農4)が京大史上初となる代打逆転満塁本塁打を放つなど、記録にも記憶にも残るシーズンとなった。

秋季リーグは、開幕から8連敗を喫する苦しいスタートとなった。それでも10月16日、エース水江日々生(法3)が春の覇者・近大に4―1で投げ勝つと、19日には同じく近大相手に大川琳久(農3)が逆転サヨナラ満塁本塁打を放ち、1982年の新リーグ発足後、初となる近大からの勝ち点を獲得した。

10月20日に行われたプロ野球ドラフト会議では、京大史上最速の152㌔右腕・水口創太(医4)が福岡ソフトバンクホークスから育成7位で指名を受けた。硬式野球部からのプロ入りは8年ぶり2人目の快挙。また、主務でアナライザーの三原大知(経済4)もアナリストとして阪神タイガースに入団が決定した。(学部、学年は当時のもの)

近大に勝利し喜びを爆発させる京大ナイン



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11月祭


3年ぶりに飲食企画実施


今年度の11月祭は11月19日から22日まで、大学での実地開催を基本としてオンライン企画を組み合わせた「ハイブリッド形式」で開催され、コロナ前のおよそ10分の1にあたる、約1万人が来場した。対面企画の実施は3年ぶり。感染拡大防止のため来場者には事前予約が義務付けられたほか、今年度も応援団による前夜祭の実施はなかった。

学外者の企画参加の可否について、11月祭事務局は昨年6月の全学実行委員会(全学実)で、感染状況を踏まえて秋に再度判断する意向を示した。そのうえで、7月の企画登録会では京大生の企画のみ申請を受け付ける方針を提案した。しかし、参加者から11月祭の意義として学外との交流などをあげて反論が出たことを踏まえ、事務局は提案を取り下げ、夏の企画登録会では学内外から出展を募集することを決定した。また、来場者に関して入構制限を実施する方針を共有した。

事務局は10月の全学実で、京大生を含む来場者の事前予約の実施を発表した。来場者の範囲を巡っては、大学側は当初、▼会場の収容力の観点から京大生の入構が困難になる▼飲酒、周辺道路などへの影響が大きいこと、などを挙げ、来場者を京大生と近畿の高校生に限定するよう求めた。これに対し事務局は、▼予約枠の制限により京大生の来場を確保し、▼飲酒や酒類の持ち込みを禁止するとして、来場者を京大生に限定しないよう交渉を行った。結果、11月には学外者の来場や飲食企画の実施が認められ、当日はイートインスペースの設置により感染対策を行った。

なお、屋内企画については、参加者が過去に設備を破壊する事例が相次いだとして大学側が教室貸出を拒否し、体育館での実施にとどまった。事務局は11月の全学実で声明文を発表し、参加者による過去の設備損壊を自省した上で、教室貸出を大学側に要望し続けていくとした。

模擬店とステージ=吉田南グラウンド



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熊野寮祭


総長室「突入」試みる


熊野寮祭実行委員会は11月25日から12月5日まで、熊野寮祭を開催した。例年試みている時計台の「占拠」に代わり、今年度は大学運営などに関する要望書を湊総長に直接提出することを目標として「総長室突入」を試みた。

11月25日、熊野寮生は「熊野寮D棟コンパ」と称し、時計台前の広場で立て看板の設置やライブ演奏、炊き出しを行った。熊野寮祭の開幕を宣言・周知するのが狙い。大学側は22日に「時計台占拠」に対して警告する告示を出し、学生に企画へ参加しないよう求めていた。当日も職員の配置や、時計台記念館の入口前を封鎖するなどで対応した。機動隊も出動し、正門付近で警戒にあたった。一方、寮祭実行委員会は本紙の取材に、時計台の「占拠」は元々企画していなかったことを明かしている。

12月2日には、「総長室突入」と題し、時計台前での演説後、百人を超える寮生らが総長室のある本部棟へ行進した。職員は、寮生らに教育推進・学生支援部厚生課に取り次ぎを依頼するよう要求し、建物内への立ち入りを制止した。寮生らは、「厚生課を経由した依頼は実現されてこなかった」として、制止する職員を退け、本部棟内へ立ち入って「湊総長を出せ」と要求したものの、最後まで総長は姿を現さなかった。その後、警察官が入構したことにより撤退した。寮生が総長へ提出を予定していた要望書は、保健診療所の再開や学生処分の撤回など計10点の要望を含んでいた。参加していた寮生は「学生の行動力を示し、大学当局に対する強い牽制」になったと意義を語った。

大学は「総長室突入」企画を受け、参加者の行動を「迷惑行為、侵入行為、危険な暴力行為」と非難する声明をKULASISおよびホームページ上に掲載した。また、警察の出動に関して、事故や負傷につながる恐れのため「抑止する必要」があったとし、大学が通報したことを明かした。対して、寮自治会は厚生課での窓口交渉の中で、大学は「一方的に」声明を出したと抗議し、大学が寮自治会と直接話し合いの場をもつよう求めている。

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