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本紙報道で1年間を振り返る ニュースダイジェスト 2021年3月―2022年2月

2022.03.16

目次

    新型コロナウイルス
    学生支援
    遺骨問題
    吉田寮訴訟
    立て看板問題
    論文不正
    霊長類研究所
    11月祭
    熊野寮 時計台「占拠」
    保健診療所
    附属図書館業務委託


新型コロナウイルス

10月から対面授業続く 課外活動 制限維持

20年春から感染症の流行が続くなか、京大は21年前期の授業を原則対面で始めた。18年ぶりに時間割を変更して昼休みを延長し、食堂の混雑緩和を図った。構内に賑わいが戻ったが、感染状況の悪化に伴い2週間でオンライン中心に変更。6月末からは再び原則対面に移行した。後期は「混雑の抑制」を理由にオンライン中心で開始したが、3週間後に対面へ戻し、後期終了まで続けた。新年度も原則対面で開講すると発表している。

課外活動では、20年7月から事実上の許可制をとり、感染状況に応じて屋内の活動を制限してきた。21年は3月から屋内活動を認めた。4月後半からの約2カ月と8月末からの1カ月強は屋外のみとしたが、10月以降は制限を変更していない。くわえて、21年4月からは対面での新歓活動を条件付きで解禁したほか、公にビラを配る機会を設けた。一方、非公認団体や他大生に対し、学内施設の利用や活動参加を認めない旨を一貫して明示している。また、6月末から新たに西部課外活動棟の共用室の利用を再開したものの、夜間借用を短縮しているほか、物品取り出し以外での部室使用を認めていない。21年春には、12の課外活動団体が要望書を提出し制限緩和を求めた。大学はメールで「今しばらく我慢して」と回答した。

京都府は21年4月以降、まん延防止等重点措置と緊急事態措置を繰り返したが、10月後半にすべて解除した。1月末から再び重点措置をとっている。

学内でワクチン接種

7月から京大は、厚労省の制度を利用してワクチンの学内接種を実施した。約4万人分を手配し、他大学の学生や市民も受け入れた。接種終了後の活動制限の緩和について京大は、8月時点で本紙の取材に「検討中」と答えていたが、大幅な変更には至っていない。

2年連続でオンライン開催とする行事があった一方、昨春中止した卒業・入学式は、保護者の入場を不可として開催したほか、2回生が対象の入学式を1年越しで開催した。

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学生支援

複数の奨学金制度を新設

京大は5月27日、民間の寄付金25億円を原資に、返済不要の奨学金制度「Create the Future Project」を創設すると発表した。コロナ禍で経済的に困窮する学生を支援し、多様な分野で若手研究者を育成することがねらいだ。学部3・4回生には5万円、修士・博士課程の学生には10万円を毎月給付する。11月25日から12月13日まで予約採用の申請を受け付けたほか、2022年4月にも募集する予定だ。共に22年の4月分から支給が開始される。10年間で1200人の学生を支援することを目指すという。

8月には給付奨学金を新たに設け、地方公共団体や民間財団の給付型奨学金を不採用となった学生や、未申請で今年に入って家計が急変した者を対象とした。同月10日から24日にかけて募集し、審査基準を満たす約130名には年額15万円が給付される。

11月12日には、がん免疫薬「オプジーボ」の特許使用料を巡って行われた本庶佑・特別教授と小野薬品の訴訟で和解が成立した。和解の条件として、京大が小野薬品から230億円の寄付を受けた。その寄付金をもとに、12月13日の記者会見で「小野薬品・本庶記念研究基金」を設立したと発表した。生命科学を中心とした自然科学の分野で、研究環境の質の向上と若手研究者の育成が目的だ。支援方法や対象など、制度の具体的な内容は学内で検討するという。

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遺骨問題

琉球遺骨訴訟 結審 4月に判決へ

京大が保有する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟で、2021年には3回の公判が行われた。8月の第10回公判では、原告による遺骨の保管状況の検証要求を受け裁判所が被告・京大に保管ケース内の撮影を求めたが、京大は応じなかった。22年1月20日には最終弁論となる第12回公判が開かれ、結審した。判決の言い渡しは4月21日に京都地裁で行われる。

訴訟は、沖縄県今帰仁村(なきじんそん)の百按司墓(むむじゃなばか)から、1929年に金関丈夫(かなせきたけお)・京都帝国大学助教授らが持ち出した遺骨について、原告が返還と損害賠償を求めて2018年12月に提起した。京大は2017年に26体の遺骨を保有していることを認めており、墓に埋葬されていた王家・第一尚氏の子孫や松島泰勝・龍谷大教授ら原告5名が、その違法性を訴えている。被告・京大側は、第1回口頭弁論から一貫して、金関氏の遺骨収集や保管に違法性はないとの見解を示している。

本訴訟では、原告が返還を受ける権利を有するかが争点のひとつであり、京大は原告が祭祀承継者にあたらないと主張してきた。一方、原告側は、琉球では独自の信仰のもと広範な祖先を拝む集合墓参りが続けられてきたと説明し、これが民法897条の定める「慣習」にあたるため原告は「祭祀を主宰すべき者」であるとしている。

アイヌ遺骨 返還要求に応じず

京大が保管を続けているアイヌ遺骨に関して、11月10日、アイヌ民族らがつくる2団体が、遺骨の返還や話し合いを求める要望書を提出した。総長や理学・文学・医学研究科長、総合博物館長を宛先としている。団体員やアイヌ民族の有志約20名が京大を訪れたが、職員に入館を拒否され、建物入り口での提出となった。同様の要求が2020年4月・7月・9月・11月に出されたが、京大は書面で要求を拒む対応を続けていた。

京大の調査に基づいて文科省が公表している資料によれば、京大総合博物館には医学部教授が1924年に樺太、26年に釧路市で墓を掘り返すなどして収集したアイヌ民族の遺骨87体と副葬品が収蔵されていた。うち26体に関して京大は2018年に国が定めたガイドラインにのっとり、北海道白老町の国立博物館(ウポポイ)の敷地内に設けられた慰霊施設へ移管し、残りの61体は保管を続けている。2団体は提出した要望書で、アイヌ遺骨の返還や、遺骨への面会、収集経緯や保管状況の公開などを要求した。

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吉田寮訴訟

2019年に京大当局が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生を提訴した問題で、2021年には、第6回から第10回の口頭弁論が行われた。

第5回までの争点

この裁判での争点は、▼大学と寮生の契約関係▼現棟の老朽化の度合い▼大学と吉田寮自治会が結んだ確約書の有効性の3点だ。

まず、京大は、大学と寮生は管理者と利用者という関係にあり、両者間に契約は存在しないと説明した。そのうえで、仮に契約関係が認められる場合でも、使用貸借契約であり、京大が裁量を持ち退去を求めることができると主張した。これに対し、寮生側は、京大は法人として寮生と契約を結んでおり、それは賃料の支払いを伴う賃貸借契約に類似した契約だとして、居住者の権利を訴えた。

また寮生側は、確約書に定められている「話し合いの原則」にもとづいて、提訴の却下を求めている。京大は、大学の中で正式な決裁を経ていないため、確約書は無効だと主張している。しかし寮生側は、担当の副学長は決裁権限を持つと反論した。

老朽化に対する評価を巡っては、京大は2回の耐震診断にもとづいて、現棟は倒壊の恐れがあると主張している。一方、寮生側は2回目の診断では基準が変更されたために否定的な評価に変わったものの、耐震強度の測定結果はほとんど変わっておらず、直ちに倒壊するほど朽廃していないと主張している。

第6から10回の弁論

3月4日に開かれた第6回弁論では、京大が代替宿舎の提供により現棟居住を巡る契約は終了すると主張していることに対して、寮生側は、京都大学寄宿舎規程に定められた寮生の自治が、代替宿舎では達成できないと反論した。

5月20日の第7回弁論では、寮生側が学説を援用し、京大と締結した確約は寮の執行委員長に委任せずとも個々の寮生に帰属すると指摘。法人でない寮自治会が結んだ確約の効果は各寮生に及ばないとする京大の主張に反論した。

8月26日には第8回弁論が行われた。寮生側は現棟の建築物としての文化的価値を説明し、学生の居住も含めて保護すべきだと主張した。

10月14日の第9回弁論と12月13日の第10回弁論では、京大と寮生側が現棟の耐震性をめぐって応酬した。寮生側は現棟の老朽化について、一級建築士からの意見書も踏まえ、耐震性に問題はないと主張した。これに対し京大は、被告の用いる指標は建物の部材の劣化を考慮していないと説明し、「居住し続けるのは危険」と反論した。

被告側の弁護士によると、双方の主張はほぼ出揃い、耐震性をめぐる追加の応酬を経て結審に至るという。

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立て看板問題

組合 4月末に市と京大を提訴

京大がキャンパス周辺の立て看板を撤去したことを巡り、大学の職員組合は4月28日付で京大と京都市を提訴した。市の条例に基づく大学の立て看板撤去は、労使慣行として定着していた組合の看板設置を阻害し、表現の自由を侵害するものだとして、550万円の損害賠償を求めた。

組合は4月9日から5月31日まで、訴訟費用に活用するためクラウドファンディングを実施した。大学関係者や近隣住民約400名からの支援が集まり、金額は338万円に達した。

大学周辺の立て看板について、屋外広告物条例に違反するとした市の指導を受け、京大は2018年5月に立看板規程を施行した。設置基準に反するとして、組合の立て看板が事前通告なく撤去され、組合は団体交渉で抗議したものの大学から「誠実な説明がなかった」との見方を示していた。

原告「表現の自由を侵害」と主張

8月5日、第1回口頭弁論が京都地裁で開かれた。被告が立て看板の及ぼす景観への悪影響を主張していることについて、原告・組合は看板を撤去しても垣根しか見えないこと、立て看板が地域独自の景観を作ってきたことを指摘した。また、市の条例と看板の撤去により、表現の自由及び組合の団結権を侵害されていると主張した。これに対し被告は、条例は憲法に違反せず、撤去は施設の管理権に基づくため不当性はないとした。

11月11日には2回目の口頭弁論が開かれ、組合は立て看板の設置場所が表現の自由をできる限り保障するべき「パブリックフォーラム」にあたると主張した。その根拠として、立て看板が地域住民に浸透しており高い伝達性を持っていること、学術的な内容を伝える看板は大学の存在意義に適することを挙げた。

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論文不正

京大 初の博士号取り消し 論文盗用が判明

京大は5月25日、人間・環境学研究科の元大学院生・金晶氏の博士論文に盗用が認められたとして、12年に授与していた博士号を取り消した。学位取り消しは開学以来初。

19年5月に通報を受けて大学が調査した結果、11ヶ所の出典を示さない引用などが判明し、20年8月に公表した。それらの論文を自身の博士論文に転用していたことも発覚した。

京大によると、金氏は「深く反省している」という。再発防止策として大学は、剽窃チェックツールの使用の必須化を挙げた。

捏造など新たに37件 懲戒の元教授

京大は9月28日、論文不正で19年に停職1年の処分を下した理学研究科の林愛明・元教授について、新たに4本の論文で37件の捏造や改ざんが見つかったと発表した。学内規程にもとづき同日付で懲戒解雇相当とした。林氏は昨年2月に退職しており、論文撤回の求めに応じていないという。

16年に出された論文で10個の改ざんや盗用が見つかり、19年3月に大学が公表したところ、翌月に新たな通報が入った。17年から18年に発表されていた熊本地震に関する論文で地図上の断層を示す点の捏造やグラフの書き換えが発覚した。潮見佳男副学長は会見で「極めて遺憾」と述べた。

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霊長類研究所

元教授 論文捏造で懲戒解雇相当

京大は10月15日、霊長類研究所の正高信男・元教授が在職時に発表した4本の学術論文について、捏造を認定したと発表した。不正が認められたのは、元教授が2014年から19年に発表した大麻の合成方法などに関する論文で、実験が実施された事実を確認できなかった。1月25日、京大は当該教授に懲戒解雇相当の処分を下した。

霊長類研をめぐっては、2020年6月に、松沢哲郎・元特別教授らによる研究費の不正支出も発表されている。

不正受け新センターに再編

京大は、10月26日、愛知県犬山市にある霊長類研究所を22年4月1日付で事実上解体し、新センターに再編する方針を発表した。研究費の不正支出や論文不正への再発防止策の一環で、研究所の統合性の低さにあわせて、所内の研究領域の一部が学内の他部局に近いことを考慮して決定したという。

現在霊長類研に所属する12の研究分野と付属センターのうち、担当教員による不正が発覚した思考言語分野と認知学習分野を含む3つを廃止する。その他は、脳科学系の5つを新センターに、残りの4つを、理学研究科や総合博物館など研究領域の関連性が高い既存の他部局に組み込む。教員は移行先の組織に所属し、技術系や事務の職員は継続して勤務するという。研究施設がある犬山地区は「京都大学犬山キャンパス」と新たに位置づけ、各部局が協議会を組織して管理・運営し、現在施設にいる動物の飼育も継続する。組織の改変で「研究所」の名称が消滅するのは1999年の食糧学研究所の廃止以来、学内で2例目となる。

学界から憂慮の声

再編公表に先立つ25日、元所長の杉山幸丸・京大名誉教授が代表を務める「霊長類学および関連分野の研究者有志の会」が、再編撤回を求めるオンライン署名運動を開始した。「有志の会」は、11月16日に開いた会見で、霊長類研で行われてきた人材育成および国際的な共同研究の成果を強調した上で、再編で学問領域が分断され、それらの機能が停止しかねないと危惧を示した。12月16日には、約3万筆の署名と要望書を京大に提出している。今後の対応について、京大は本紙の取材に、「参考にしつつ設置準備委員会において検討している」と回答した。

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11月祭

「消極的承認」で今年もオンライン開催

今年度の11月祭は、11月19日から22日の4日間、全てオンラインで開催された。ウェブ上の特設ページに、無観客で収録した動画などが公開されたほか、ユーチューブやZoomでリアルタイムの配信も行われた。例年実施している企画のうち、著名なゲストを招く「スペシャルライブ」や「フリーマーケット」「模擬店企画」「フィナーレ&ファイヤー」などは行われなかった。

開催形態をめぐっては学内の意思決定機関である全学実行委員会(全学実)で議論が交わされた。11月祭事務局は、8月時点で、飲食物の提供をせず対面開催を行う方針を示していたが、9月頭には、一転してオンラインでの開催を提案した。大学当局が対面開催を容認しない姿勢を示したことによる。9月末に開かれた2度の全学実で、全面オンラインでの開催が決定した。参加者からは、事務局の姿勢や大学当局の説明をめぐり完全には賛成できないとする声が多く上がり、実務上の理由から「消極的承認」に至った旨を確認する附帯決議付きで承認された。また、10月の全学実で、附帯決議に基づく声明文が作成され、次年度以降の開催形態を公正に決定する意思が確認された。

今年度11月祭の統一テーマは「我ら社会の変異株」に決定した。

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熊野寮 時計台「占拠」

警察が登攀を阻止

12月3日、百周年時計台記念館にて、熊野寮祭イベント「時計台占拠」の一環として、寮生らが時計台への登攀を試みた。京大は「梯子を持って本部構内に突進してくるという暴力的な行為があった」として警察に通報し、警察官数十名が入構した。寮生と警察官が数十分間こう着状態となったのち、寮生らは1時間ほどで撤退し、時計台に登ることはなかった。

大学は、12月15日付の告示で、事前の通告にもかかわらず寮生らが時計台登攀を試みたことについて、「極めて悪質であり、本学として看過することはできない」としたうえで、熊野寮自治会について、「自治会としての責務を果たす意思と能力がないと言わざるを得ない」と批判した。企画は、熊野寮祭のイベントとして10年以上前から行われている。2017年から大学は不参加を呼びかける告示を出し、同年には警察を導入。20年には学生10名ほどが梯子をかけて時計台に登り、大学が警察を構内に招き入れた。

寮祭直前の11月24日に大学は、20年度の寮祭で時計台に登ったとされる学生ら8名に対し、停学・譴責処分を発表していた。総長・各研究科長らが構成する学生懲戒委員会などで審議し、懲戒規程の「学生の本分を守らない」行為と判断した。21年2月には当該学生個人に対し弁明の機会について連絡があった。この連絡に対し熊野寮自治会は抗議声明を発表。「弱い立場にある学生に、一方的に反省を押し付ける不均衡な構図」と指摘し、大学に寮自治会との交渉を求めた。本紙の取材に京大は「全員から『弁明書』と題する書面の提出はあったが、いずれも聞き取り調査には出頭しなかった」と回答した。時計台「占拠」への参加を理由とする懲戒処分は初めて。

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保健診療所

一般診療終了 存続求める声も

保健診療所は1月31日、吉田キャンパスの内科を閉鎖した。3月25日には精神神経科および桂と宇治の内科を終了する。

京大は12月1日、1月末に診療所の一般診療を終了すると発表し、それに先立ち神経科は初診受付を12月8日付で締め切ると告知。一週間後の8日に「各所調整のうえ」撤回し「当分の間」初診を受け付けると表明した。1月19日には、桂と宇治の内科と合わせて3月25日で神経科を終了すると発表している。

診療所は、1923年の学生健康相談所の開設を皮切りに、学内者向けに内科・神経科の診療やその他保健サービスを実施してきた。診療所の廃止には、学内外から反対の声が上がっている。12月2日に「京大保健診療所存続を求める会」が結成され、6日には要求書を大学に提出、続く7日には職員組合からも提出があった。これらをうけて京大が8日に出した補足情報では、診療終了の背景として「人員や予算に限りがある中で、できるだけ学生のニーズに応えるため」と説明し、受診者の減少を指摘した。一方で、来年度より各キャンパスに学生相談窓口を新設しつつ、診療所を「健康管理室」に改称し一般診療以外の業務を継続する方針を明らかにした。一般診療の代わりとして4月からは学外の医療機関を適宜紹介するという。

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附属図書館業務委託

学生バイト 21年度で雇い止め

京大が1月25日に公開した入札公告から、2022年度の1年間、附属図書館の業務の一部が外部の業者に委託されることがわかった。委託予定の時間帯に働いている学生アルバイトは今年度限りで雇い止めとなる。また、委託に伴う経費削減のため試験期間の閉館を30分早める予定だという。

委託されるのは、学生アルバイトのみで運営する平日17時から閉館までの時間帯と休日の窓口業務の一部だ。ただし、業者は返却された本を含め図書を並べなおす作業を行わない。委託を決定した理由について附属図書館は、サービスの総合的な改善や、正規職員がいない時間帯の安全性の確保を挙げた。22年度から国立大学法人の運営が第4期中期計画・中期目標に入ることに伴い、業務体制が見直されたことによるという。23年度以降も委託を継続するかは未定だ。

附属図書館は、学生に対し雇い止めについて「京大の規定に則り説明している」とした。京大の職員組合は1月27日付の団体交渉申入書の中で、委託に伴い図書館サービスの質が低下するほか、働いている学生の経済状況が悪化するとの見解を示し、学生アルバイトの雇用を継続するよう求めた。

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