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霊長類研 元教授 論文4本捏造 実験実施の確認とれず

2021.10.16

京大は10月15日に会見を開き、霊長類研究所の元教授が在職時に発表した4編の学術論文について、捏造を認定したと発表した。論文に記載された実験についての通報を受け、6論文を対象に調査を行った結果、4論文で実験が実施された事実を確認できなかった。大学は、元教授に対して当該論文の撤回を勧告し、今後処分を検討するとしている。

不正が認められたのは正高信男教授(当時)が2014年から19年に発表した、大麻の合法成分などに関する論文。2020年3月に、学内の通報窓口へ、記載通りの研究が行われたか疑義があるとの通報があった。これを受け、学内外の委員からなる調査委員会が2020年6月から2021年7月にかけて、元教授の著作物や研究室が提示したデータ等の調査や、本人や関係者への聞き取り調査などを実施した。委員会によれば、元教授は、データの提出など定められた調査への協力を行わなかったという。また、実験に使用したとされる分量の薬剤を購入した履歴や、被験者が実験に参加した事実も確認できなかった。

これらの調査結果から、委員会は、4編の論文について実験実施の事実自体が認められないとし、捏造を認定した。正高元教授は2020年3月に定年退職しており、4編の論文のいずれも共著者はいなかった。また、4論文のうち1編は、実験にあたって必要な倫理審査を経ていないとして違反認定を受けていたこともわかった。

発生要因について委員会は、元教授本人の倫理観の欠如に起因するところが大きいとしたうえで、各研究室で専門分野が多岐にわたるために不正行為の発覚が遅れた可能性を指摘した。また、再発防止策として、学術誌への掲載が決定した時点で、研究データを研究公正部局へ提出することなどを義務づけるという。

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