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霊長類研 新センターに再編 不正経理受け分野の廃止も

2021.11.01

京大は10月26日に会見を開き、愛知県犬山市にある霊長類研究所について、来年4月1日付で事実上解体し再編する方針を表明した。松沢哲郎・元特別教授らによる研究費の不正支出に対する再発防止策の一環だ。現在霊長類研に所属する研究分野は、新たに設置する「ヒト行動進化研究センター(仮称)」や他の部局に振り分け、一部は廃止する。犬山市にある研究施設は運営協議会を設けて引き続き利用するという。

昨年の京大などの発表で、霊長類研では関連施設の整備などをめぐり、松沢元特別教授らによる総額11億円の不適切な会計処理があったことが明らかになっていた。所内の分野間で不正経理を制止する動きが確認できなかったとして、大学は専門委員会を発足させ、研究所の運営体制について調査・検討を行った。その結果、15日に公表した正高信男・元教授の論文不正と同様、研究所の扱う領域が多岐にわたり、運営・研究の面で各分野の連携が不十分だったことが一因だと判断した。こうした研究所の統合性の低さにあわせて、所内の研究領域の一部が学内の他部局に近いことを考慮し組織の再編案を提示、教育研究評議会で正式に決定した。

来年4月の再編後は、現在霊長類研に所属する12の研究分野と附属センターのうち、担当教員による経理や論文の不正が発覚した思考言語分野と認知学習分野を含む3つを廃止。それ以外については、脳科学系の5つを新センターに、残りの4つを理学研究科や総合博物館など、研究領域の関連性が高い既存の他部局に組み込むという。霊長類研に配置されていた教員は移行先の教員組織に所属することとし、技術系や事務の職員は継続して勤務する。研究施設がある犬山地区は「京都大学犬山キャンパス」と新たに位置づけ、新センターや研究分野の振り分け先となる各部局が協議会を組織して管理・運営し、現在施設にいる動物の飼育も継続するという。

霊長類研は1967年、国が学部・研究科と並ぶ組織と規定する附置研究所のひとつとして設立され、国内唯一の霊長類研究に特化した拠点として活動してきた。今回の再編でセンターという位置づけに変更されるが、過去の研究所の改編では別名の研究所に置き換わる例が多く、「研究所」の名称が消滅するのは1999年の食糧科学研究所の廃止以来、学内で2例目となる。大学は附置研とセンターについて、規模に差はあるが「質的な違いはない」と述べた。また、不正支出への対応として国などへ返還する資金を捻出するために組織再編による経費削減を図った可能性を問われると「全く関係ない」と否定した。湯本貴和・霊長類研究所長は会見に寄せたコメントの中で、改編に至ったことを「謹んで受け止める」としたうえで、「全国の研究機関や研究者への貢献が途切れることのないよう、新たな組織にスムーズな引き継ぎを行う」と述べた。

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