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寮生「耐震性問題なし」 建築士の意見書を援用 吉田寮訴訟 第9回口頭弁論

2021.11.01

京大当局が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生を提訴した問題で、10月14日、第9回口頭弁論が京都地方裁判所大法廷にて行われた。被告・寮生側は争点となっている現棟の老朽化について、建築士からの新たな資料を提示したうえで、耐震性に問題はなく、明け渡しの請求は棄却されるべきという従前の主張を補強した。

被告側の弁護士は、一級建築士からの意見書をもとに、吉田寮の耐震性について陳述した。原告・京大が2005年と12年の耐震診断報告書をふまえて「吉田寮現棟は極大地震時に倒壊する恐れがある」と説明していることについて、「極大地震」とは数千年に一度程度の地震を指すもので、居住できないほどの危険性はないと指摘した。「吉田寮は現況においても一定の耐震性能を有しており、適切な修補がなされれば本件建物を継続的に使用することが可能である」と結んで、約10分の口頭弁論が終了した。

老朽化をめぐって京大は、寮生との関係は使用貸借契約に類似した無名契約にもとづくとしたうえで、現棟に倒壊の危険性があると指摘し、それが契約を終了する「やむを得ない事由」にあたると主張している。一方、被告側はこれまで、「やむを得ない事由」を根拠に契約を解除することは法的にできないと指摘してきた。また、たとえ可能だとしても契約終了が認められるほど老朽化していないと説明しており、今回の弁論に向けて専門家の意見書を用意して主張を補う旨を予告していた。

原告側からの出席は弁護士3名、被告側からの出席は弁護人と寮生の計14名だった。第10回口頭弁論は京都地裁にて12月13日に開催される。今回の被告側の主張に対する見解を尋ねたところ、大学は「係争中の事案につきコメントは差し控える」とした。裁判当日の京都地裁には約60名が集まり、抽選で約40名が傍聴を許可された。感染症対策として傍聴席は本来の半分ほどに制限された。

被告側弁護人 「出口は見えてきた」

閉廷後には吉田寮自治会が報告集会を吉田寮食堂で開催し、約30名が参加した。感染拡大の影響で前回の集会はオンラインで開かれており、5月以来の対面開催となった。大学側はこの集会の開催について本紙の取材に「承知をしていない」と回答した。

登壇した被告側弁護士は「裁判所は被告・原告双方からの主張は出尽くしたと認識している。出口は見えてきた」と述べ、次回以降の裁判で、審理が立証や尋問といった口頭弁論の一つ先の段階に移行するという見解を示した。なお、大学側は今後の裁判の見通しについて本紙の取材に、「特にない」と述べるにとどめた。

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