吉田寮訴訟 寮生と京大の和解成立 寮生ら「寮機能の存続勝ち取った」 京大 来春から現棟耐震工事に着手
2025.09.16
会見に臨む寮生ら。和解は「スタート地点」と語った(=大阪市北区の大阪弁護士会館にて。8月25日)
寮生の再入居認める 食堂利用は継続
和解条項では主に現棟の耐震工事と、工事に伴う現棟の明け渡しについて定めた。一審被告のうち、現在も吉田寮に居住する寮生8名は、現棟を26年3月末までに明け渡す。京大は明け渡し後「速やかに」現棟の耐震工事に着手し、5年以内に工事を完了する。寮生らは大学が提供する民間の代替宿舎に移るが、工事完了後、8名は学籍などの条件を満たせば、現在と同じ月額400円の寮費で再入居できる(=表)。寮生側の森田基彦弁護士はこの点について「現棟の『寮機能の存続』を勝ち取った」として、大きな成果だと評価した。
また、和解では、現棟に隣接する吉田寮食堂が耐震工事の対象にならないことを確認した。寮食堂は、寮外の学生や地域住民が運営に参画し、イベントスペースとして利用されてきた。2015年に補修を完了しているが、裁判では大学が現棟とともに明け渡しを求めていた。寮食堂が工事対象から外れたことで、寮食堂のイベント利用は現棟の耐震工事中も継続できる見通しだ。
建替や敷地転用を示唆
耐震工事の内容について、和解では京大が工事計画の公表を約束するにとどまり、現棟の建て替えや、敷地の転用が行われる可能性がある。京大は本紙の取材に対し、耐震工事の詳細は「現時点では未定」としつつ、「現棟の敷地はそのまま新しい寮の敷地となるものではなく、本学における教育・研究環境の整備や全学の学生の福利厚生の充実のための施設の用地に充てる」ことを検討しており、これを「和解協議の場でも大学の方針として被告寮生らにも伝達した」と明かした。また、工事計画の策定は「吉田寮生など一部の者」だけの意見や要望をもとに行うものではない、と回答した。
なお、これについて吉田寮自治会は公式HPで「実際に現棟を運営・使用する当事者との話し合いを一切拒否し、京大執行部の独断で現棟の建て替えや敷地の転用を決めたり、現棟の運営形態を一方的に変更するようなことは、断じてあってはならない」とコメントしている。
寮自治会「対話再開を」
寮自治会は8月25日、和解成立について大阪市内で記者会見を開いた。出席した被告寮生は、和解条項は「諸手をあげて喜べるものばかりではない」としつつ、再入居が認められたことを重視し、受け入れることを決断したと明かした。寮生は、工事のため現棟を明け渡すという和解の骨格が、提訴以前に寮自治会が大学に提案したものと「ほぼ同じ」だと指摘。訴訟期間中、現棟の安全対策が停滞していたと批判し、訴訟は時間の浪費だったとして、提訴した大学当局に反省を求めた。そのうえで「強硬措置をやめ、話し合いに協力してほしい」と大学に改めて対話の再開を呼びかけた。
京大は同日、HPで声明「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」を公開。「和解の成立により学生の退去が実現した」として、これを「大きな進展」と表現している。
寮自治会は提訴以前の19年2月、一定の条件下で同年5月末までに現棟の居住を取りやめることを京大に提案したが、京大はこれを受け入れず、4月に寮生20名を提訴した。京大は本紙の取材に対し、和解を決断した経緯について、第二審では高裁から和解の打診があったとしたうえで「大学の考え方に概ね沿った内容で話し合いが進み、折り合いがついた」とコメントした。
8月25日、寮自治会は▼寮自治会による自主管理・自治運営▼現棟の建築的・歴史的価値を尊重した耐震改修の速やかな実施▼工事内容や吉田寮のあり方をめぐる寮自治会との協議再開――を求める声明を発表し、26日、大学の窓口に書面で提出した。これについて京大は本紙の取材に対し、「吉田寮自治会から対話を求める声があった」との認識を示した一方、対応方針については「現時点で回答できることはない」としている。
記者会見で寮生らは、和解は対話再開に向けた「第一歩」という姿勢をみせた。寮自治会では和解を契機に、現棟の建て替えではなく、補修による耐震工事の実施や対話再開を求める署名を新たに募っている。吉田寮の「自治・自主管理」を目標に、大学との話し合いの再開を引き続き求めていく構えだ。
