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京大と被告3名が控訴 吉田寮訴訟 地裁判決うけ

2024.03.16

京大と被告3名が控訴 吉田寮訴訟 地裁判決うけ
京大が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生を提訴した問題で、寮生14名の居住継続を認めた2月16日の地裁判決に対し、原告・京大および居住継続が認められなかった3名の被告が大阪高裁に控訴した。

寮生控訴、あくまで「対話を」


寮自治会は2月28日、退去要請以降に入寮した3名が、居住継続が認められなかったことを不服として控訴すると発表した。寮自治会は、3名が「入寮した時期によって不利益な扱い」を受けることは、福利厚生施設として認められないとした。その上で、控訴はあくまで大学の「不当な訴訟提起」への対応であり、控訴を「取り下げる用意はある」として、引き続き話し合いによる解決を求めていく方針を強調している。

「判決不服」京大控訴


京大は先月29日、14名に対する明渡し請求が棄却されたことを不服として、控訴することを発表した。判決は17年12月の退去通告以前から居住する14名の居住継続を認めた一方、既に退寮した23名、および退去通告以降に入寮した3名には明け渡しを求めたが、京大はこれを「学籍のある寮生の一部に対する明渡しを否定した」と表現した。その上で「学籍の有無に関わらず明渡しを求めることが必要」であり、控訴を決定したと説明した。寮側の話し合いを求める声について、大学の見解を尋ねたところ、入寮募集の停止や、大学の指示があれば新棟からも退去することを含む、19年2月の文書「吉田寮の今後のあり方について」の条件の遵守を誓約する寮生であれば「話し合いを行う予定」である旨を回答した。

川添元理事「承服できない」


提訴当時の学生担当理事・川添信介氏(現・福知山公立大学長)は地裁判決について本紙の取材に対し「承服できない」と回答したうえで、「(寮生の安全を確保する)大学の責任について裁判所がどのように考えているのか不明」だとした。さらに、判決が京大による入寮禁止措置を認め、それ以降の入寮者に明け渡しを命じた一方で、それ以前の入寮者については、確約書の内容に基づき大学の請求を退けたことについて、「(寮自治会にとっては)『入寮禁止措置』そのものが『確約書違反』のはず」と指摘し、「一貫した判断とは思えない」とコメントした。

寮自治会、控訴に抗議


寮自治会は同日に京大の控訴に対して抗議し、確約の有効性を認めた地裁判決は「寮自治会と京都大学当局との間の話し合い及びそこでの合意が、正当かつ有効なものであると認め」ているとして、改めて訴訟の取り下げと話し合いの再開を強く求めた。また、控訴の理由として京大がHPで公開している文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の控訴について」に対して3月5日付で声明を発表し、京大が「判決で指摘された事実に対する判断」を示していないと指摘した。寮自治会は老朽化対策について交渉が停滞していたこと、退去通告後の妥協案を大学が拒否したことをあげ、京大が「他になすすべなく提訴に至ったかのように記述するのは不当」だと主張。「現執行部は、訴訟による解決という道が適切であったかどうか、今一度考え直す機会があった」として、京大の控訴判断に改めて遺憾の意を示した。

教員有志、抗議声明


なお、22日に教員有志が京大に対し、訴訟を取り下げ対話による解決を求める声明を提出している。声明提出に立ち会った人間・環境学研究科の細見和之教授は京大の控訴について「まったくもって不当」とコメントした。そして、地裁判決は大学側の「論点をことごとく否定」したと指摘し、京大が控訴を取り下げ、寮自治会との話し合いを再開するよう願った。退去が求められた3名の控訴については「理解できる」としたうえで、大学との話し合いが再開する場合には控訴を取り下げる、とする寮自治会の方針については「私たちの考えと一致している」と賛同の意を示した。

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