ニュース

吉田寮訴訟 2月判決 寮生「今からでも取り下げを」

2023.10.16

吉田寮訴訟 2月判決 寮生「今からでも取り下げを」

最終口頭弁論での双方の主張(準備書面などをもとに作成)

京大当局が吉田寮現棟と食堂の明け渡しを求めて寮生を提訴した裁判で、10月5日、最終口頭弁論が京都地裁で行われ、結審した。寮生3名が陳述し、「話し合いで解決を目指すべき」と訴えた。判決は来年2月16日に言い渡される。

1人目の寮生は、17年12月の退去要求以降、副学長から個人アドレス宛てに寮自治会の運営を批判するメールが届くなど「圧力」を受けたと証言した。2人目は、自治会からたびたび現棟の補修案を示したものの返答がないとして、「耐震問題を停滞させているのは大学」と批判した。3人目は食堂について、イベント会場として寮内外の交流を生んでいると述べ、15年に補修されたことをふまえて判断するよう裁判官に求めた。

一方、原告京大は準備書面で、過去に実施された団体交渉について、「長時間にわたって、ヤジを飛ばされ、威圧的」だったと説明した。「在寮期限」の迫る18年夏には少人数交渉が行われたものの、自治会が同年の入寮募集に踏み切ったことから「無責任」と判断し、「協議を行う余地が一切なくなった」として提訴に至ったという。

最後に被告側の弁護士が陳述し、他大学の寮の明け渡し訴訟に言及した。先例として、法人化前の東京大や山形大(いずれも寮生が敗訴)ではなく、学校法人・神奈川大と寮生との契約関係を認めた横浜地裁判決(控訴後に和解)を用いるよう求めた。京大は寮生との契約関係を否定しており、寮生に占有権原はないと訴える。寮生側は、契約にもとづくとしつつ、契約解除に相当するほど建物が朽廃していないと主張している。

弁論後、被告が記者会見を開いた。弁護士は、大学が新棟も含めて入寮募集を認めていないことをふまえ、「裁判に勝っても負けても課題は残る。抜本的な解決は、寮生と大学が話し合うこと」と訴えた。続いて寮生は、4年半にわたる訴訟の判決への思いを問われ、「今からでも訴訟を取り下げてほしい」と求めた。この日、裁判所には約140名の傍聴希望者が集まった。夜には自治会が報告集会を開き、教員らが登壇して寮生への支持を表明した。

〇総長 教員との懇談拒否

報告集会で法学研究科の髙山佳奈子教授は、9月8日付で教員有志として総長らに対して吉田寮に関する懇談を申し入れたところ、拒否されたと明かした。10月3日に厚生課を通して「係争中の事案に関わるため対応しかねる」と伝えられたという。髙山教授は、「係争中」を理由に拒むのは刑事事件の場合だと説明し、「無責任」と批判した。教員有志は7月、総長らに寮生との対話を求める要請書を出した。その賛同署名を募っており、判決までに集約して提出するという。

訴訟の取り下げの可能性や髙山教授の批判について本紙が京大に見解を尋ねたところ、業務が立て込んでいるとして期日までに回答が得られなかった。

関連記事