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寮生 寮の動的保存を主張 吉田寮訴訟 第8回口頭弁論

2021.09.16

京大当局が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生を提訴した問題で、8月26日、第8回口頭弁論が京都地方裁判所大法廷にて行われた。被告・寮生側は寮の建物としての文化的価値を説明した。現棟を巡って京大は提訴前、寮生による点検・清掃を認めれば退去するという寮自治会の提案を拒否した経緯がある。寮生側は退去要求の受け入れは吉田寮の「凍結的保存」につながるとして、その生活面も含んだ保存の重要性を主張した。

吉田寮の食堂や便所、階段室は、1889年の旧制第三高等学校から移築されて現存する。被告側は法廷で写真を提示しながら、これらの建築物について「明治前期の建築技術を知るうえで貴重な資料」と主張した。そのうえで、建物の保存方法について寺社仏閣のような「凍結的保存」ではなく「学生の居住を含めて保護の対象とすべき」と述べた。また建築史学会からの評価も引用したうえで、「これらを収去するのはまさに蛮行であり、本件明け渡し請求は棄却されるべき」と結び、約10分の口頭弁論が終了した。原告側からの出席は弁護士3名、被告側からの出席は弁護人と学生を含め14名だった。

第9回口頭弁論は京都地裁にて10月14日に開かれる。今回の被告側の主張に関する本紙の取材に対して、大学側は「係争中の事案につき、コメントは差し控える」と回答を避けた。

裁判当日の京都地裁では約60名の傍聴希望者が並び、抽選で約40名が傍聴を許可された。感染症対策として、傍聴席は本来の半分ほどに制限されていた。寮自治会は閉廷後に吉田寮内での対面集会を予定していたが、急激な感染拡大状況を鑑み、急遽対面集会を取りやめ、オンライン集会を開催した。まず寮自治会が近況を報告し、吉田寮祭を10月に対面形式で開催することを検討していると明かした。続いて、被告側弁護人が弁論の再現を行い、最後に有志による寮への応援スピーチが行われた。寮自治会は「感染状況が悪化するなか、裁判によって吉田寮に住む学生から住居を奪おうとする京大は、その悪質さや危険性を認識していない」と批判し、訴訟の取り下げと交渉の再開を引き続き求めていくと述べた。

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