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原告 祭祀承継権を改めて主張 琉球遺骨返還訴訟 第11回

2021.11.16

京大が保有する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟の第11回弁論が10月29日、京都地裁で開かれた。最終準備書面の陳述を次回公判に控え、原告側2名の証人尋問が行われた。原告のひとりは、自身が遺骨が持ち出された墓の祭祀承継者であることを改めて主張し、祭祀葬祭者が途絶えているとした京大の主張に反論した。また、原告側は他の大学の例を挙げ遺骨の返還を「世界的な潮流」として、一刻も早い返還を求めた。

訴訟は、沖縄県今帰仁村の百按司墓から、1929年に金関丈夫・京都帝国大学助教授が持ち出した遺骨について、原告が返還と損害賠償を求めて2018年12月に提起した。京大は2017年に26体の遺骨を保有していることを認めており、墓に埋葬されていた王家・第一尚氏の子孫や松島泰勝・龍谷大教授ら原告5名が、その違法性を訴えている。被告・京大側は、2019年3月の第1回口頭弁論から一貫して、金関の遺骨収集や保管に違法性はないとの見解を示している。

今回の弁論では、原告側7名と被告側2名が出席し、亀谷正子氏と松島教授の2名の証人尋問が行われた。本訴訟では、原告が返還を受ける権利を有するかが争点のひとつになっている。この点について亀谷氏は、自身が墓に埋葬された王家の子孫であることを戸籍をたどって確認したと述べた。また、松島教授は、祭祀承継は民族全体で行うものとし、琉球民族のひとりとして自身が権利を有すると主張した。一方、被告は尋問を通して、亀谷氏が祭祀承継者となってから期間が短いことなどを理由に、承継者としての正統性に疑念を示した。

亀谷氏は、遺骨に骨神が宿るという考え方は地域では一般的であり、墓に手を合わせて感謝を伝える慣習は重要なものであるとしたうえで、「京大は返還に応じず、私の先祖の骨は研究によって消滅する。私と先祖の骨神に平安を与えてほしい」と述べた。松島教授は、京大に遺骨の閲覧を申請したが、十分な説明なく拒否されたことなどを挙げ、京大が遺骨を適切に保管しているか疑わしいとの見方を示した。

公判終了後には原告によって報告集会が行われ、原告側の弁護士は「裁判所に期待しているが、司法の考え方は厳しい」と話した。次回は1月20日で、最終準備書面の陳述が行われ、判決期日が決定する。

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