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琉球遺骨訴訟 控訴審始まる 原告「国際法に則った判断を」

2022.10.01

琉球遺骨訴訟 控訴審始まる 原告「国際法に則った判断を」

大阪高裁に出廷する原告ら=9月14日、大阪府大阪市

京大が保有する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟の控訴審第1回弁論が9月14日、大阪高裁で開かれ、原告の亀谷正子氏と弁護士が陳述した。約80人が傍聴に訪れた。原告は第一審判決を「曖昧」と批判し、「高裁には国際法に沿った判断を期待する」と述べた。

訴訟は、沖縄県今帰仁村(なきじんそん)の百按司墓(むむじゃなばか)から、昭和初期に京都帝国大学の研究者が持ち出した遺骨について、原告が返還と損害賠償を求めて2018年12月に提起した。京大は2017年に26体の遺骨を保有していることを認めており、墓に埋葬されていた王家・第一尚氏(だいいちしょうし)の子孫や松島泰勝・龍谷大教授ら原告4名が、遺骨の返還を求めている。4月21日に言い渡された第一審判決で、京都地裁は原告側の請求を棄却した。

第一審から原告は、遺骨の返還を請求する権利を国際法である自由権規約27条に求めている。今回の控訴審で原告は、少数民族による文化享有権などを定めた当規約は、締結国の各司法府による個別の事例への対応を求めるもので、第一審判決はこれに背くと主張した。第一審で京都地裁は当規約を「締結国に対して政治的責任を負うことを宣言したものにとどまる」とし、個人に具体的権限を付与するものではないとしていた。

同じく争点となっていた遺骨の所有権について、第一審で京都地裁は、原告以外の遺骨参拝者がいることを理由に原告の請求は認められないとしていた。今回原告は、この判断を「本土のように統一的な形式があるという前提に立った誤った判断」と批判し、琉球固有の墓制への理解を求めた。民法897条には、遺骨の所有権先は「慣習」に従うとあり、原告は第一審から国際法に則った慣習の理解を求めている。

さらに、京大による遺骨占有権の有無に関して第一審で裁判所が判断を避けていると指摘し、「適正な判断を求める」と述べた。併せて、第一審後に原告の松島氏が改めて京大総合博物館に遺骨の閲覧を申請して拒否されたと明かし、京大の管理状況への疑念を示した。亀谷氏は陳述のなかで、「どんな理由があれ、お墓からご遺骨を盗むことは許されない」と訴えた。また、弁論後の記者会見では、「司法の良心と国際感覚を持ち合わせた判断を願う。琉球民族の未来のために頑張る」と控訴審への思いを語った。

控訴審は即日結審することが多いものの、今回は2回目の期日が設けられた。次回弁論は12月1日に大阪高裁で開かれ、原告は専門家による意見書の提出も予定している。

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