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琉球遺骨 「引取人あれば返す」 収集時の新聞に記載、控訴審第2回

2022.12.16

琉球遺骨 「引取人あれば返す」 収集時の新聞に記載、控訴審第2回

弁論後の原告報告集会=大阪弁護士会館

京大が保管する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟の控訴審第2回弁論が12月1日、大阪高裁で開かれ、約90人が傍聴した。原告は、遺骨が持ち出された当時の新聞に「引取人が現れればいつでも返す」旨の記載があることに着目し、改めて返還を訴えた。

はじめに、原告の松島泰勝・龍谷大教授が陳述し、地裁判決について、遺骨を信仰対象と考えず、対話にも応じない京大らとの協議を求めたとして、「全く不当」だと批判した。そのうえで、国連自由権規約委員会が日本政府に対して琉球先住民族の権利を保障するよう勧告したことや、自身が国連の会議に付随するイベントで講演した際に他の先住民族から多くの賛同の声を聞いたことなどを紹介して、「先住民族の遺骨返還は世界的な潮流」だと訴えた。

また、原告側は、京大が松島氏に対して、本件遺骨の脆弱性や、資料取扱の熟達度等を理由に一審判決後も閲覧を拒否したことに追及。日本人類学会会長の中務真人・京大理学研究科教授が本件遺骨よりも太古の遺骨を素手でずさんかつ無造作に取り扱っている映像があるとして、自らが遵守していない制限や条件を理由に閲覧を拒絶するのは背理だとした。

▼遺骨の引き取りについて記した新聞記事(※旧字体は新字体に改めた)
「この骸骨のうちには市町村長の了解を得て無縁塚から救ひ上げられた無縁仏も居り、引取人があれば、何時でも京都から『御返り遊ばす』様な仕掛になつてゐる。」(1929年1月26日付『琉球新報』)

さらに、原告側は、遺骨が持ち出された当時の新聞記事に着目した。1929年1月26日付『琉球新報』には、「(遺骨の)引取人が現れればいつでも返す」旨の記載があり、原告側はこれを一種の契約だと考えた。そして、墓に祀られた第一尚氏の子孫であることを地裁が認定した原告の亀谷氏及び玉城氏が「引取人」に当たるとして、改めて遺骨の返還を求めた。

このほか、太田好信・九大名誉教授らが提出した、「先住民族の権利に関する国連宣言」などに関する意見書の要旨が陳述された。

原告側は、裁判所による遺骨の検証を求めている。今回の期日でも、傍聴席から「裁判長、京大の博物館に行ってください!」と声が上がり、裁判長が「検討します」と答える一幕があった。また、弁護士のみが出廷する京大に対して、「京大の関係者、一回も裁判に来てないじゃないか、出てこい!」と怒号が飛び、傍聴席から拍手が起きた。

▼先住民族の権利に関する国連宣言12条1項(要約)
先住民族は、精神的・宗教的伝統、慣習、儀式を実践・発展させる権利、遺跡を保護する権利、遺骨の返還に対する権利を有する。

「植民地主義との闘い」


弁論後、大阪弁護士会館で原告の報告集会が開かれた。原告の金城氏は「この裁判の意味は単に遺骨を返せというだけではない。沖縄の文化に対する弾圧の歴史を想い起こさにゃならん。植民地主義との闘いとしてやらねばならん」と力強く語った。

次回弁論は2月9日14時30分から大阪高裁で開かれる。原告からは『琉球新報』の記事に基づく主張の補充説明などが、被告からは原告の準備書面に対する反論などが行われる予定だ。

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