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院生募集・職員雇用にも波紋 OCW運営のセンター廃止に伴い

2022.12.16

授業動画公開サイト「京大OCW」を管轄した高等教育研究開発推進センターが9月末で廃止された問題をめぐり、センターが大学院教育学研究科に開設していた高等教育学コースで、一時期、新規入学者の募集停止が計画されていたことがわかった。教員の抗議で今年8月の入試は実施された。院生が請願書を提出して永続的な募集継続を求めたが、指導教員のポストが移管されておらず、研究科に移籍した教員の退職後は後任が置かれない見込みだ。また、センターに所属する教職員は、大学から配置換えの提案がなされず、自らの移籍先の確保に奔走する必要に迫られた。今回、それぞれの関係者が本紙の取材に応じた。

目次

院生「学び合い」 重要性訴える
「雇用継続」の言葉 一転、退職や退勤も

院生「学び合い」 重要性訴える


高等教育学コースは1998年に教育学研究科に協力講座として設置され、旧センターの教員が担当してきた。現在、9名の院生が所属している。所属学生によれば、今年5月、来年度以降の入学者を募集しない方針が判明したという。教員の抗議を受け、来年度入学者の募集は実施が決まったが、それ以降の募集については不透明な状況となった。これに対し、院生8名が賛同する修了生25名と連名で請願書を作成。6月9日付で楠見孝・教育学研究科長に手渡し、院生同士の学び合いが「研究に重要な役割を果たしている」として、コースの存続及び永続的な新入学者の募集の継続を求めた。

6月下旬の研究科会議で、5名の指導教員のうち、松下佳代教授ら3名が教育学研究科へ移籍すると決定し、コースの存続が決まった。会議後、楠見研究科長は院生らに教員の移籍決定を伝えたうえで、入学者の募集については「どのコースも同じ危機に立たされている」とし、「永続的な保証はできない」と回答したという。なお、教員ポストはセンターの人事を管轄していた全学教員部に置かれたまま研究科に移されていないため、移籍した教員の退職後は後任が置かれない可能性があり、将来的なコースの存続が不透明な状況だ。

コースに所属する学生に対し、センターの廃止が知らされたのは1月上旬。その時点では、飯吉透・センター長(当時)から、教員は他部署へ異動して指導を続けるため「院生への直接的な影響はほとんどない」と説明を受けていた。取材に応じた学生は、コースを「大学教育学や高等教育学を牽引している存在」だとして、教育改善の専門家を養成する場としての意義を強調した。

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「雇用継続」の言葉 一転、退職や退勤も


センターの廃止決定後も、所属する教職員の配置換えに関する提案はなされず、教職員は自身で雇用を確保する必要に迫られた。取材に応じた教員は、1年契約の有期雇用でセンターに勤務していた。現在は来年3月までの契約で教育学研究科に在籍している。

センター廃止について、教職員に正式に発表されたのは1月上旬だった。センターの事業をどの部署に移行するか、同月中に決定する予定だと伝えられたという。3月末には、飯吉センター長から、京大執行部には「学内外で次の職が見つからなければ、次の3月までは雇用を継続する」意向があると伝えられた。しかし事業の移行先や、無期雇用の教員を含めた職員の配置換えが決定しない状況が続く。6月末にはセンター長との面談で、執行部から雇用継続についての提案がなされていないことが判明したという。危機感を覚えた教員は京大の職員組合に相談し、センター長から研究科長への働きかけを経て、教育学研究科で半年間雇用されることが決まった。

他の有期雇用の教職員のなかには、学術情報メディアセンターや他大学での雇用が決まった職員もいる一方、多くが退職を余儀なくされた。いずれも「センターの廃止がなければ継続して雇用されると期待していたはず」だという。「センターの執行部が提案するべきだった」と教員は述べ、「センターが積み重ねてきた成果や人材は大学の資源でもあるはず。その意識があるなら廃止後の見通しがあるべきで、それについて説明が必要だ」と大学の姿勢に疑問を示した。センターの職員の雇用について、大学は本紙の取材に対し「人事案件については回答を控える」と答えた。

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