企画

本紙報道で1年間を振り返る ニュースダイジェスト 2025年3月―2026年2月

2026.03.16

目次

国際卓越研究大学
京大関係者の受賞
タテカン訴訟
遺骨問題
吉田寮訴訟
京大独自の入学料・授業料免除制度

国際卓越研究大学


第2期公募で認定候補に


25年12月、京大は国の大学ファンドから最長25年間助成金を受ける「国際卓越研究大学」の候補に選出された。追加の審査を経て、1年以内に正式に認定される見込み。体制強化計画の概要によると、京大は29年度までに現在の部局・小講座制から研究領域に基づくデパートメント制へ移行したうえで、各デパートメントの希望や研究評価に応じて「戦略的な予算配分」を行う。学内では組織改編が始まる一方、認定により生じる問題点を指摘する教員や学生もいる。

京大は、複数の研究領域を管轄する部局制では、各領域ごとの研究評価ができないこと、小講座は閉鎖性や独立性が高く、若手の自立性や流動性を阻害することを理由に、デパートメント制に移行すると説明する。さらに、50年度までに博士学位取得者を現在の3倍である2100名に増やす目標を掲げており、大学院の重点化も図る。12月の記者会見で阿曽沼慎司・総長特別補佐は、申請の背景に運営費交付金の減額やインフレなどによる大学経営の厳しさがあると語った。研究力強化を資金獲得につなげ、50年度末までに独自基金を1・2兆円積み立てる算段だ。

京大は24年4月に成長戦略本部、25年1月に総合研究推進本部、4月に教育改革戦略本部を新設し、研究支援や教育改革に取り組んでいる。26年1月には、京大は事務組織規程の一部を改正し、事務組織であるオフィスの設置に向けて、各デパートメントに対応する準備室を置いた。

学内では、卓越大制度への懸念を示す声もある。10月、クスノキ前で学生有志が卓越大の問題点を訴えた。卓越大認定に向けた意思決定に学生が参加できない点を批判し「全構成員が総長と対等に話し合える場」を作るよう求めた。また、1月には京大職員組合が緊急学習会を開き、学内外から150名が参加した。学内外から7名の教員が登壇し、各大学の組織改革の現状や計画案の懸念点を共有した。

【関連記事】
職組 卓越大に3度目の懸念 双方向の説明会を求める(2025年4月16日)
【特集】国際卓越研究大学 第2回申請へ 京大の説明状況や組織改編/認定校・東北大の動向を追う(同年5月16日)
教育改革戦略本部 初年次教育扱う 京大 卓越大の申請「準備中」(同上)
卓越大 第2期公募に京大含む8校申請 今年度中に認定、助成開始へ(同年6月1日)
学生有志が卓越大反対スタンディング 「全構成員との対話を」と訴え(同年11月1日)
京大 卓越大の認定候補に 大規模な組織改革で自立した経営へ(同年1月16日)
【特集】京大 国際卓越研究大学 認定へ 「歴史的な大規模改革」で目指す姿(同上)
京大 大学院英語化は「適宜検討」 卓越大の概要案めぐり見解(同年2月16日)

目次へ戻る

京大関係者の受賞


京大初・国際学術賞を創設


2025年度には京大関係者による栄誉ある賞の受賞が相次いだ。25年3月にはアーベル賞を日本人で初めて柏原正樹・数理解析研究所特任教授が受賞。10月にはノーベル化学賞が北川進・高等研究院特別教授ら3人に、同生理学・医学賞が坂口志文・名誉教授ら3人に贈られた。さらに26年1月、京大出身作家・畠山丑雄氏が芥川賞を受賞した。また、京大は25年9月、研究のグローバル化を志向して国際学術賞を創設し、1人目の受賞者を選考した。

アーベル賞は「数学のノーベル賞」と呼ばれ、2002年にノルウェー政府が創設。柏原氏は50年以上にわたる代数解析学などの功績が評価され、受賞に至った。

ノーベル賞は京大で研究教育に携わった2名が受賞した。京大出身の研究者2名が同年にノーベル賞を受賞するのは初めて。北川氏が開発した多孔性配位高分子(PCP)は気体の貯蔵や分離が可能であり、環境問題などへの活用が期待されている。坂口氏は自己への過剰な免疫反応を抑制する「制御性T細胞」の発見とその免疫抑制メカニズムの解明が高い評価を受けた。

芥川賞を受賞した畠山氏は京大文学部卒。小説『叫び』では大阪を舞台に恋愛と政治を描いた。

また、京大は国内外の傑出した若手研究者を表彰する「京大レクチャーシップアワード」を創設。初年度の25年には医学・生命科学分野からプリンストン大のクリフォード・ポール・ブラングウィン教授が受賞した。京大が全学的な国際学術賞を創設するのは初めて。

【関連記事】
数理解析研 柏原特任教授にアーベル賞 日本人初 現代数学発展に貢献(2025年4月1日)
北川氏・坂口氏 ノーベル賞受賞(同年10月16日)
京大 国際学術賞を初創設 未来のノーベル賞候補表彰(同年10月16日)

目次へ戻る

タテカン訴訟


地裁高裁ともに職組敗訴


京大周辺の立て看板撤去をめぐり、京大の職員組合が京大と京都市に損害賠償を求めた裁判は、昨年6月に京都地裁で、今年2月に大阪高裁で判決があり、両者ともに職組が敗訴した。職組は最高裁で争う予定。

2017年12月、京大は立看板規程を制定すると、18年と20年に職組の看板を撤去。職組は撤去の事前告知がなかったと抗議したが、大学から「誠実な」説明がなかったとして、21年4月に市と大学を提訴した。

両者は▼京大が撤去の理由に挙げる屋外広告物条例が、憲法の保障する表現の自由に違反するか▼労働者と使用者間で法的な拘束力を持つ「労使慣行」が、看板設置においても存在したか▼看板撤去は違法な実力行使にあたるか、などの点で応酬していた。

地裁は6月、条例は憲法に違反しないとの認識を示した上、労使慣行は存在せず、看板撤去は違法な自力救済に該当しないとして、職組の請求を全面的に棄却した。

判決を受けて職組は控訴。11月には高裁で口頭弁論があった。職組は、尾池和夫・元京大総長らの証人尋問を要求し、尾池氏の「労使慣行は成立していたと言える」といった発言を引用した。

ただ、高裁は証人尋問を却下し、今年2月に判決を出した。判決で高裁は、尾池氏の発言は「個人的な感想」に過ぎず、労使慣行があったとまでは認められないとした。

【関連記事】
立て看訴訟結審 6月判決 撤去の根拠めぐり再応酬(2025年3月16日)
立て看訴訟 京都地裁 京大職組の請求棄却 職組「不当極まりない」 控訴へ(同年7月1日)
イチからわかる タテカン訴訟 地裁判決 職員組合が敗訴 表現の自由・労働基本権めぐり(同上)
タテカン訴訟 2月に高裁判決 尾池元総長の尋問は却下(同年12月1日)
タテカン 大阪高裁 職組の控訴棄却 尾池元総長の発言は「個人的感想」(2026年3月16日)

目次へ戻る

遺骨問題


京大 琉球民族の遺骨を移管


京都帝国大学の研究者が戦前に沖縄県の百按司墓から持ち出した琉球民族の遺骨をめぐり、2025年5月に京大は少なくとも29体の遺骨を今帰仁村教育委員会へ移管した。11月には、沖縄県と鹿児島県に由来する少なくとも466体の遺骨を保管していると明かし、遺骨返還のガイドラインをホームページに公表した。今回公表した遺骨には個人が特定できるものはなく、由来地の地方自治体などの公共的団体と移管協議をする方針を示した。

京大によると、京都帝大に所属した研究者が沖縄県今帰仁村運天で収集した「人骨15箱」を今帰仁村教育委員会に移管した。今帰仁村教育委員会は、京大と協議書を締結し、遺骨を埋葬せずに保管する方針を定めた。

2018年12月、墓に祀られた王族の子孫らが京大に対して遺骨の返還を求める裁判を起こした。23年に大阪高裁は請求を退ける判決を出すも、遺骨をふるさとへ返すよう付言していた。

12月には元原告の松島泰勝氏が、ガイドラインに則って京大に琉球遺骨106体の移管を要請した。京大は、松島氏が代表を務める「ニライ・カナイぬ会」が移管の対象となる「公共的団体」にあたらないとして、協議に応じなかった。松島氏は、公共的団体とは法人格の有無を問わず公共的な活動を営む団体の総称であり、琉球遺骨の返還を求める同会も該当すると述べ、「公共的団体について京大独自の解釈を行い、ガイドラインにない新たな条件を付けた」と批判した。

京大は、アイヌ民族やオーストラリア先住民の遺骨も保管してきた。5月には、東大や国立科学博物館とともに、京大がオーストラリア先住民の遺骨2体をオーストラリア政府と先住民に返還した。11月にはアイヌ民族の遺骨と副葬品の返還を求める団体が謝罪を求める要求書を京大に提出したが、京大は要求に応じなかった。

「京大は人の心をもって対応してほしい」と語る松島氏(=時計台記念館)



【関連記事】
京大 琉球民族の遺骨を移管 子孫ら「墓への返還求める」(2025年6月16日)
京大 豪先住民遺骨2体を返還 豪大使館で式典 合意書を締結(同年7月1日)
京大 遺骨返還のガイドライン公表 琉球・奄美遺骨の保管状況明かす(同年11月16日)
京大 琉球遺骨移管協議に応じず 請求団体は抗議 再請求へ(同年12月1日)

目次へ戻る

吉田寮訴訟


裁判は和解も対話進まず


吉田寮現棟の明け渡しを求めて京大が寮生を提訴した裁判の控訴審は、2025年8月に和解が成立し、寮生が一部勝訴した第一審を含めて6年半に及ぶ裁判が終結した。一方、京大が吉田寮自治会による運営を認めず、自治会と大学との交渉が実現しない状況は続いた。

25年8月25日、大阪高裁で和解が成立し、大学が現棟の耐震工事を実施すること、被告寮生のうち和解時点で吉田寮現棟に居住していた8名が、工事後に再入居できることが約束された。耐震工事のため、8名は26年3月末までに現棟を明け渡し、大学の提供する民間宿舎に移る。京大は5年以内に耐震工事を完了し、8名は工事後の建物に現在と同じ寮費で再入居できる。

耐震工事の内容について、京大は9月、本紙の取材に対して「現時点では具体的な耐震工事案(建替工事を含む)はない」「現棟の現在の敷地はそのまま新しい寮の敷地となるものではない」などと回答し、建て替えや敷地の転用を示唆していた。寮自治会は、現棟の建築的・歴史的価値を尊重した耐震改修の実施を求め、大学が「独断で」工事内容を決定することはあってはならない」とコメントした。

9月2日、京大は文書「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」を公表し、和解後も寮自治会による吉田寮の運営や、2015年に完成した新棟への居住を認めない姿勢を明確にした。一方、寮生らは記者会見で、和解を対話再開に向けた「第一歩」として、寮の自治・自主管理を目指し、引き続き大学との交渉を求める姿勢を示した。

12月19日、寮自治会は和解後はじめての公開シンポジウムを開催した。寮生らは訴訟の経緯や和解後も残る課題を整理し、▼寮自治会の再公認▼2019年以降に入寮した寮生の在寮資格の獲得▼大学当局との正式な交渉再開、を目指す方針を改めて明らかにした。また、酒井朋子准教授(人文研)、髙山佳奈子教授(法学研)ら専門家や、元寮生で考古学者の中尾芳治氏も登壇し、大学自治や吉田寮現棟の建築的価値について意見を述べた。

【関連記事】
吉田寮訴訟 寮生と京大の和解成立 寮生ら「寮機能の存続勝ち取った」 京大 来春から現棟耐震工事に着手(2025年9月16日)
吉田寮訴訟 現棟補修をめぐるこれまでの動向 新棟入居、寮運営めぐり生じた溝(2025年9月16日)
吉田寮 和解後を考えるシンポ開催 京大教員も2名登壇(2026年1月16日)

目次へ戻る

京大独自の入学料・授業料免除制度


26年度以降入学の学部生 対象外へ


2025年11月、京大は26年度以降に入学する学部生について、京大独自の入学料・授業料免除制度の対象外にすると発表した。国による学生支援の拡充を理由として挙げ、「大学院学生に対する入学料・授業料免除枠に戻して使用する」と説明している。一方、学内外からは反対の声が上がり、京大生らの有志が募るオンラインの反対署名は1万筆を超えた。

学部生の入学料・授業料免除は、国による高等教育の修学支援新制度(新制度)を京大の独自制度で補うことで実施されている。新制度は返還を要しない給付型奨学金と入学料・授業料の免除から成り、京大の独自制度は新制度の申請資格を満たさない学生や、新制度において、3分の1・3分の2免除となった学生に対して、半額・全額免除となるよう差額を補填していた。25年度、国は扶養する子供が3人以上の多子世帯の授業料を無償化した。この多子世帯無償化を具体例として、国による学生支援の拡充が変更理由の一つと京大は説明する。

04年の国立大学法人化以降、国は一定割合の学部生・大学院生の授業料を減免できるように、相当額を運営費交付金に上乗せしてきた。国立大学は上乗せ分などを用い、独自の基準で減免していた。学部生のみが対象の新制度が開始された20年度以降、学部生に関しては上乗せが原則なくなった。京大は、従来の上乗せ交付が続いた大学院生分を学部生と院生の双方の授業料免除に用いて独自制度を続けてきた。今回の変更により、大学院生分の上乗せは大学院生の授業料免除のみに使われることになり、京大は「本来的な制度目的に照らした変更」と本紙に説明した。

学内外では、反対の声も挙がっている。12月8日には、「京大独自の入学料・授業料免除制度変更に反対する会」が京大生中心で発足された。変更の撤回を求めるオンライン署名を1万筆以上集め、1月29日、変更の経緯を問う公開質問状とともに、学生課職員へ手渡した。

【関連記事】
京大 独自の授業料免除 新入生対象外へ(2025年12月1日)
独自の授業料免除 段階的廃止へ 削減分で院生支援か 反対署名8000超(同年12月16日)
京大 免除人数や予算回答せず 独自の授業料免除の変更(2026年1月16日)
学生ら署名1万筆と質問提出 独自の授業料免除変更 背景は(同年2月16日)
川添信介 元・学生担当理事「支援十分か疑問」 変更せめて「1年先に」/【京大独自の授業料免除制度】次の学部入学生は対象外へ(同上)
小林雅之 桜美林大特任教授「周知に課題」 目的ねじれた国の新制度/【京大独自の授業料免除制度】次の学部入学生は対象外へ(同上)

目次へ戻る

関連記事