京大 卓越大の認定候補に 大規模な組織改革で自立した経営へ
2026.01.16
国際卓越研究大学制度とは、国際的に卓越した研究を展開し、経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が期待される大学へ、国が10兆円の「大学ファンド」から1年あたり最大で数百億円を助成するもの。24年11月には東北大が認定された。今回、東京科学大は26年4月から体制強化計画を実施すると判断された。京大は3校目の認定となる見込み。
審査結果が公表された19日の記者会見で、湊長博総長は、申請の目的を大学が財政的に自立して成長する形を作るためだと述べ、「抜本的な組織構造改革で新しい大学の姿を目指す」と意気込んだ。改革の結果、教育と研究を担ってきた研究科・学部は、研究組織(デパートメント)と教育組織(学部・大学院)へ分離することになる。デパートメントとは、研究を行う教員、ポスドクなどの研究者の所属先で、研究活動・研究指導の場であるという。学生は引き続き、学部・大学院に所属することとなる。
研究組織について、京大の資料によると、▼複数の研究領域を管轄する部局では、組織全体で研究評価ができず戦略的な資源配分ができない▼小講座は閉鎖性や独立性が高く、若手の自立性や流動性を阻害するという課題があるという。これらを解決するために、部局・小講座制から研究領域に基づく「デパートメント制」へ移行する。部局は、研究・教育・管理運営等を一体的に実施する小講座から構成され、1部局の中に異なる研究領域が混在していることもあったという。29年度までに、1千ある小講座を、現在人事機能を担う「学域・学系」の区分に基づき約40の「デパートメント」に統合し、35年度末までに「理想的な形」に再編するという。
各デパートメントには、事務組織であるデパートメントオフィスが設けられる。1月14日、京大は事務組織規程の一部を改正し、オフィスの設置に向けて、各々のデパートメントに対応する準備室を総務理事のもとに置いた。
また、教育組織については35年度までに大学院生が所属する18の研究科を「Graduate Division」に一元化し、人文社会、自然科学、医・薬、学際の4分野を設けるという。大学院生はデパートメントごとの学位プログラムに取り組む。50年度までに博士学位取得者を現在の3倍である2100名まで増やす目標を掲げ、大学院の重点化を狙う。加えて大学院の授業を原則英語化する。
学部では、研究者との対話による少人数実践教育を300クラス開講するほか、留学生の受け入れを拡大するという。35年度までに入試改革、50年度末までに学部の「再編と規模適正化」を行う。記者会見で阿曽沼慎司・総長特別補佐は、学部・入試改革について、利害関係者が多いとして「最初の10年間で社会全体の合意形成を図る」と述べるにとどまった。
研究体制強化計画では、事業成長の目標も掲げる。直近5年間で総額1043億円の寄付金を、50年度末までの25年間で6020億円まで増やす。寄付や民間からの資金などを含む外部資金を年間5%増加させ、50年度末までに3倍にするほか、自己収入比率を47.8%から50年度末までに67.7%に引き上げる。
記者会見で阿曽沼氏は、大学経営の厳しさが近年増していると語った。国から交付される運営費交付金は法人化前から1割以上減額していることに加え、近年インフレが続いていることから「人件費を払うのにも汲々とする状況」だという。「大学の自治を確立するために、裁量性のある資金を持つことが重要だ」と述べた。
「学生のニーズを掬って」
学内の合意形成について、阿曽沼氏は「計画には合理性があるので、合理的な反対ができない。学術領域ごとにふさわしい支援がもらえることが非常に理にかなっているとみんな思っている」として「学内の反対はない」と述べた。京大の資料によると、総長が部局長会議や教育研究評議会などで継続的に構想を説明し意見交換を行ったほか、動画の配信や全教員へのアンケートを実施してきた。
第1期申請時から、京大は、学生に向けて対面の説明会の実施や申請内容の情報公開をしてこなかった。10月にはクスノキ前にて、学生有志が卓越大認定で生じうる問題を訴えた。卓越大認定に向けた意思決定に大学の構成員である学生が参加できない点を批判し、「全構成員が総長と対等に話し合える場」を作るように求めていた。しかし、学生との対話の場が設けられることはなく、認定候補となった12月19日に第2期申請時の研究体制強化計画の概要が公開された。
本紙は研究体制強化計画の受け止めを、大学政策に関する著作がある駒込武教授(教育学研究科)に取材した。駒込教授は、デパートメント制の導入で「総長を含む運営方針会議の委員が研究科や専攻のスクラップ・アンド・ビルドを容易にできるようになるのでは」との見解を示した。現行の案は「産・官・学・軍複合体のニーズに即した改編を可能にするための『自由化』ではないか」と懸念した上で、「学部・学科の改編は、少子化の影響で避けられないものかもしれないが、学生のニーズを掬い上げる形で行われるべきだ」と述べた。
