数理解析研 柏原特任教授にアーベル賞 日本人初 現代数学発展に貢献
2025.04.01

会見に臨む柏原特任教授(中央左)
アーベル賞は2002年、ノルウェー政府により創設された。柏原氏は日本人初の受賞者で、授賞式ではノルウェー国王より賞が授与される。同じく「数学のノーベル賞」とされるフィールズ賞が40歳以下の数学者に授与されるのに対し、アーベル賞は年齢制限がない。賞金は日本円で約1億円。
柏原氏は78歳、東大大学院理学系研究科出身。1971年の修士論文で、現代数学における重要な基礎概念の1つとされる「D加群」の理論を確立した。京大数理解析研教授、同所長などを経て、2010年より同特任教授を務める。アーベル賞委員会は柏原氏を「誰も想像しなかった方法で、驚くべき定理を証明してきた。真の数学的先見性を持つ人物」と称賛した。
27日に行われた記者会見で、柏原氏は「50年を超える研究全体が高く評価された」と感想を述べた上で、「非常にびっくりした」と笑顔を見せた。受賞については「代数・解析・幾何という、数学の大きな3分野を結びつけることができたのが大きかったのでは」と私見を述べた。数学研究の現状については「大学院を出ても数学では就職できず、それを見た優秀な大学生が研究の世界に入ってこない悪循環が起きている」と懸念を示しつつ、後進に対して「新しいことに挑戦するのが大切」と激励した。
授賞式は5月20日にノルウェー・オスロ大学で行われ、柏原氏も出席する予定。