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組合 再設置の看板、即日撤去される 不当労働行為で申立へ

2020.07.01

京大職員組合は6月16日の正午過ぎ、組合の活動を知らせる掲示ボードを百万遍北西門付近に設置した。2018年5月に京大当局が事前の通告なく組合の掲示ボードを撤去し、その後の団体交渉においても「撤去の理由についての誠実な説明がなかった」ため、設置に至ったという。掲示ボードは同日午後5時頃までに当局によって撤去されたため、組合は不当労働行為として申し立てることを通告している。

設置は、組合の教職員数名で行われ、中空樹脂(プラダン)で作成された横2㍍×縦1㍍の看板が、擁壁の上に設置された柵へロープで固定された。設置後には、看板の周辺で、組合中央執行委員長の駒込武・教育学研究科教授が設置に至る経緯を説明した声明を読み上げた。同席した組合副委員長の高山佳奈子・法学研究科教授は「組合として話し合いを望んでいたが、京都市の説明と食い違う説明をされ、団体交渉が正常な形で行えず、このような措置に至った」と説明し、同副委員長の川島隆・文学研究科准教授は、「掲示ボードは、私たちの意見を社会に発信し伝えるためのツールで、それをふさがれている現状は息苦しい。京大がそういう息苦しい大学にはなってほしくない」と再設置への思いを語った。

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【再設置に至る経緯を述べる駒込氏=本部構内北西門周辺、6月16日】




撤去後に説明、大学側「設置に検討余地なし」 再設置に至る経緯

京大当局は、看板を即日撤去した理由を、「京都大学立看板規程に定められた場所以外に設置されたものであるため」と本紙の取材に対し説明している。キャンパス周辺の立て看板について、「京都市屋外広告物等に関する条例」に違反するとの指導を京都市から2017年10月に受け、「法令遵守のため、学内における立看板の取扱いについて「立看板規程」を定めた」という。2018年5月に規程が施行して以降、京大当局は、規程に合致しない掲示物の撤去を続けている。

京都市の条例では、屋外に表示される掲示物について、大きさや色彩、規制区域ごとの掲示上限などが定められている。京大は、本部構内や北部構内、吉田構内は基本的に、上限が5平方㍍の「第二種地域」に該当する。ただし、今出川通の道路沿いは上限が15平方㍍の「沿道型第二種地域」、西部構内は上限が10平方㍍の「第三種地域」と定められている。条例の運用として、本部構内は、東大路通や東一条通に面した側面で5平方㍍を超えないことを前提に、全体としては15平方㍍まで掲示物を出すことができる。京大当局は、東大路通に面した「大学運営上の必要により立てている看板等」が5平方㍍の上限を超えていることを京都市から指摘されており、組合の掲示物を設置する余地はないと説明している。

大学当局は、立看板規程は京大外構周辺および構内に設置されている看板すべてに例外なく適用されると考えており、組合の看板を撤去した。しかし、組合には、当局側の認識は伝わっていなかった。2018年5月に組合の看板が撤去される以前には、組合へ規程に関する正式な通知がなかったため、組合側には看板が規程違反という認識はなかった。規程は看板の設置について「京都大学学内団体規程により総長が承認した団体が行うものに限る」(第2条)としているが、労働組合は総長に承認された団体ではなく憲法で設置を認められた労働者の組織であるため、このような条文には当てはまらないという認識だったという。また、組合の看板は、2㍍×1㍍の大きさで色彩も白や緑を基調として、京都市条例への適合を図っており、条例には労働組合の看板は市の許可なく設置できることが明記されていると組合は指摘している。想定していなかった撤去を受けて組合は、抗議声明を出し、看板の原状復帰や協議を求めてきた。

大学当局が組合の看板を撤去対象とした根拠を組合に対して具体的に説明したのは、2019年2月の団体交渉が初めてであった。その場で、森田正信・総務担当理事(当時)は、組合の看板は、条例の擁壁設置禁止の条項(第5条)や屋外に設置可能な屋外広告物の面積上限(第11条)に抵触するために設置できないと説明した。上限については、規制区分が2つ重なる京大本部構内については、掲示総量の上限がより緩い基準である15平方㍍となると述べた。そして、現在京大に設置されている掲示物の総面積は、上限に達しており、組合の看板を設置する余地がないと主張した。この点については、今年2月の交渉で、その主張の前提として、上限が5平方㍍の区域ではそれを満たすことが求められていること、京大は、総合博物館前の掲示物などによってその上限を超過していることが、明かされた。そして、大学当局は改めて、組合の看板は設置する余地がないと主張した。これに対して組合は、事後的な説明の追加を批判するとともに、超過分を是正したうえであれば今出川通に面した部分については設置の余地がありそれは組合との検討事項だと反論した。

しかし、当局はあくまで検討の余地がないとの主張を、5月末に組合に文書で伝えた。組合は、労使慣行として定着してきた看板を一方的に撤去することは認められず、不誠実な交渉で労働組合活動の自由を阻害しているとして、6月16日、北西門周辺の今出川通に面した箇所への掲示ボードの再設置に踏み切った。大学当局によって撤去されたことを受け、労働委員会への申し立てを行う予定という。一方、京大当局は本紙の取材に対し、「今回の掲示ボード撤去は、法令を遵守するために制定した「立看板規程」に抵触するため、撤去したものであり、大学としては、不当労働行為とは考えていない」と述べている。

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7月1日0時30分配信

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