文化

〈講演会〉岸政彦教授 × 三宅香帆氏 対談 「ぶんこも」オープン記念

2024.11.01

〈講演会〉岸政彦教授 × 三宅香帆氏 対談 「ぶんこも」オープン記念

対談する岸教授(左)と三宅氏(右)。机に並ぶのは両氏の著書

10月25日、文系学部校舎1階の多目的交流スペース「ぶんこも」にてトークイベント「研究者が一般書・人文書を書くということ」が開催された。登壇したのは京大文学研究科の岸政彦教授と、文学部出身の文芸評論家・三宅香帆氏。研究色のある文章と一般書の両方を執筆した経験のある2人が、研究者が一般書を執筆することについて意見を交わした。

「ぶんこも」は10月18日に完成したばかりの多目的交流スペースで、対話を生み出すことをコンセプトにする。三宅氏は京大院在籍中に『人生を狂わす名著50』を出版した経歴を持ち、今年4月に刊行した新書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は20万部の売り上げを記録している。一方、岸教授は社会学者として研究に取り組む傍ら小説やエッセイなどの執筆も行い、小説『ビニール傘』は芥川賞候補となった。

初めに岸教授が三宅氏に、本を出版するに至った経緯や書評家としての道を選択した理由を尋ねた。三宅氏は「論文を執筆する文学研究よりも、自由度の高い批評の世界の方に興味を持つようになった」と述べ、「研究は楽しかったが難しかった。しかし研究の経験も今の批評の基礎になっている」と振り返った。また岸教授は「研究者が一般書を書くことに後ろめたさがある」と漏らし、「アカデミシャンになりたいのなら最初に学術書を出すべき。研究者を目指す院生には、博士論文を書くまでに一般書を書いて欲しくない」と語った。次に、三宅氏は岸教授に、研究と一般書の執筆をどのように両立しているのか尋ねた。岸教授が「小説も研究も同じモードで書いている。全部同じ人格」と答えると三宅氏は、「私は逆に分かれてしまう。それぞれのモードが統合されているのは驚きだ」と語った。

イベント後半では参加者が両氏に意見や質問を投げかけた。働いてから本を読むようになったと読書体験を語る参加者に対して、三宅氏は「自分自身も、働いたことによって読めるようになった本もある。働いている人がもっと本を読むきっかけが作れたら」と答えた。

当日は京大内外から40名以上が会場に集まったのに加え、140名以上がオンラインで参加し、2人の文筆家が交わす軽妙なトークに耳を傾けた。イベント終了後も、両氏と意見交換をするために参加者は列をなした。

本イベントについて河瀬真弥・文学研究科アカデミックフェローは、「『ぶんこも』に大学外の人を招いて行うイベントとしては第一弾」と述べ、「『ぶんこも』を読書会などにも使ってほしい」と語った。(燕)

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