〈マンガ評〉一途さ織りなす「うるせい」世界 高橋留美子『うる星やつら』
2024.07.01
主人公・諸星あたるの趣味は「ガールハント」。「ねえねえお姉さん、住所と電話番号教えて〜」すると、後ろからラムの声がする。「ダーリン、浮気は許さないっちゃ」鬼族の少女・ラムはあたるの「押しかけ女房」。身体から電撃を発して、あたるに命中させる。だが、彼はへこたれない。立ち上がって再び「お嬢さん、今度お茶でも」と他の女性に声をかける。「待つっちゃ、ダーリン‼」二人の追いかけっこは続く。
『うる星やつら』は1978年から87年にかけて「週刊少年サンデー」に連載されたラブコメディ。作者は『犬夜叉』などで知られる高橋留美子先生。初の連載作品『うる星』はアニメ化、映画化されるなど一大ブームを引き起こした。2022年から今年6月にかけて再びアニメ化されるなど、今なお大勢を魅了し続ける。『うる星』の魅力とは何か。
まずラムの功績は大きいだろう。虎柄のビキニに緑がかったロングヘア、そして頭には2本の角。ラムのビジュアルは斬新だ。空を飛べる上、電撃を発するという特徴も目を引く。「だっちゃ」という語尾も可愛らしい。だが、一番の魅力は「一途さ」ではないか。他の男には目もくれず、ただひたすらにあたるを愛して「ダーリン」と呼ぶ。電撃を与えるのも恋心からだ。見境の無い「ダーリン」に怒ることは何度もあるが、愛想を尽かすことはない。
基本的にあたるは平凡だ。女性の前では例外的に驚異的な身体能力を発揮するものの、これといった取り柄はない。頭の中は常に美少女のことでいっぱい。隙あらばナンパしようとするあたるだが、ラムに対しては冷たい態度をとることも多く、「好きだ」とも言わない。そんなあたるの魅力とは何か。
ここで4巻に掲載された『君去りし後』を紹介したい。「バイバイ」。ある日、ラムはそう言い残して空に消えた。あたるの家にはラムに似た小さな人形があるだけで、ラムは行方知れずとなる。翌日、あたるは胸ポケットに人形を忍ばせて登校。友人に頼み込み、一緒に必死になってラムを捜索する。実は故郷の星に私用で一時帰国していただけだったラム。夜中、人形にこっそり仕込んだマイクの音を拾ってみると「ラムのアホ…なにもいわんでかえることないじゃねぇか……」。翌朝、腫れた目でしょんぼり歩くあたるに、ラムは「ダーリン‼」と声をかける。「これうちの人形だっちゃ。ずいぶんよごれてるっちゃね」「知らん知らん」と、とぼけるあたる。だが、その顔は心なしか明るくなっていた。
実際、彼は心の底ではラムを本気で愛している。彼もまた「一途」なのだ。しかし恥ずかしさもあって「好きだ」と言えず、構ってもらおうと他の女子に手を出そうとするのではないか。積極的すぎるラムと、素直になれないあたる。『うる星』で相思相愛のシーンが描かれることは少ない。そのため、正反対とも言える二人の恋は際立ち、そこから目が離せなくなる。
『うる星』もう一つの魅力は「テンポの良いドタバタ」だろう。あたるの元恋人で怪力の三宅しのぶ、不気味な高僧の錯乱坊(チェリー)、金持ちで顔も整っているが、閉所恐怖症の面堂終太郎など、一癖ある面々が毎回騒動を引き起こす。そこにラムとあたるも加わって、まさに「うるせい」けれども愉快な世界が展開する。『うる星』は一話完結の話が多い。読者は話ごとに異なった世界に誘(いざな)われるため、最後まで飽きずに楽しむことができるのではないか。
以上を踏まえると、ラムとあたるの恋愛要素と、ドタバタ劇のコメディ要素が見事に調和し合った「うる星わーるど」こそが、『うる星』一番の魅力ではないか。読む中で、たまにグレーな表現にも出会う。あたるがヨーヨーでスカートめくりを披露すると、級友が「みごと‼」と感嘆するなど。だが、今日のコンプラに引っ掛からないかと「あんまりソワソワしないで」読み進めてほしい。不変的な面白さに魅了されて「いちばん好き」な作品になるかもしれないから。(郷)
『うる星やつら』は1978年から87年にかけて「週刊少年サンデー」に連載されたラブコメディ。作者は『犬夜叉』などで知られる高橋留美子先生。初の連載作品『うる星』はアニメ化、映画化されるなど一大ブームを引き起こした。2022年から今年6月にかけて再びアニメ化されるなど、今なお大勢を魅了し続ける。『うる星』の魅力とは何か。
まずラムの功績は大きいだろう。虎柄のビキニに緑がかったロングヘア、そして頭には2本の角。ラムのビジュアルは斬新だ。空を飛べる上、電撃を発するという特徴も目を引く。「だっちゃ」という語尾も可愛らしい。だが、一番の魅力は「一途さ」ではないか。他の男には目もくれず、ただひたすらにあたるを愛して「ダーリン」と呼ぶ。電撃を与えるのも恋心からだ。見境の無い「ダーリン」に怒ることは何度もあるが、愛想を尽かすことはない。
基本的にあたるは平凡だ。女性の前では例外的に驚異的な身体能力を発揮するものの、これといった取り柄はない。頭の中は常に美少女のことでいっぱい。隙あらばナンパしようとするあたるだが、ラムに対しては冷たい態度をとることも多く、「好きだ」とも言わない。そんなあたるの魅力とは何か。
ここで4巻に掲載された『君去りし後』を紹介したい。「バイバイ」。ある日、ラムはそう言い残して空に消えた。あたるの家にはラムに似た小さな人形があるだけで、ラムは行方知れずとなる。翌日、あたるは胸ポケットに人形を忍ばせて登校。友人に頼み込み、一緒に必死になってラムを捜索する。実は故郷の星に私用で一時帰国していただけだったラム。夜中、人形にこっそり仕込んだマイクの音を拾ってみると「ラムのアホ…なにもいわんでかえることないじゃねぇか……」。翌朝、腫れた目でしょんぼり歩くあたるに、ラムは「ダーリン‼」と声をかける。「これうちの人形だっちゃ。ずいぶんよごれてるっちゃね」「知らん知らん」と、とぼけるあたる。だが、その顔は心なしか明るくなっていた。
実際、彼は心の底ではラムを本気で愛している。彼もまた「一途」なのだ。しかし恥ずかしさもあって「好きだ」と言えず、構ってもらおうと他の女子に手を出そうとするのではないか。積極的すぎるラムと、素直になれないあたる。『うる星』で相思相愛のシーンが描かれることは少ない。そのため、正反対とも言える二人の恋は際立ち、そこから目が離せなくなる。
『うる星』もう一つの魅力は「テンポの良いドタバタ」だろう。あたるの元恋人で怪力の三宅しのぶ、不気味な高僧の錯乱坊(チェリー)、金持ちで顔も整っているが、閉所恐怖症の面堂終太郎など、一癖ある面々が毎回騒動を引き起こす。そこにラムとあたるも加わって、まさに「うるせい」けれども愉快な世界が展開する。『うる星』は一話完結の話が多い。読者は話ごとに異なった世界に誘(いざな)われるため、最後まで飽きずに楽しむことができるのではないか。
以上を踏まえると、ラムとあたるの恋愛要素と、ドタバタ劇のコメディ要素が見事に調和し合った「うる星わーるど」こそが、『うる星』一番の魅力ではないか。読む中で、たまにグレーな表現にも出会う。あたるがヨーヨーでスカートめくりを披露すると、級友が「みごと‼」と感嘆するなど。だが、今日のコンプラに引っ掛からないかと「あんまりソワソワしないで」読み進めてほしい。不変的な面白さに魅了されて「いちばん好き」な作品になるかもしれないから。(郷)
◆書誌情報
書名:うる星やつら 1巻
著者:高橋留美子
出版社:小学館
発行日:1980年4月
定価:360円
※全34巻
書名:うる星やつら 1巻
著者:高橋留美子
出版社:小学館
発行日:1980年4月
定価:360円
※全34巻
