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宇宙観測の重要性訴え 春秋講義で天文台長

2009.10.18

京都大学は10月5日より公開講座・春秋講義を開催している。春秋講義とは、京都大学が学術研究で培われた知的財産を大学内外の人々との共有をはかり1988年から始められた市民公開講座。今回は10・11月の月曜・水曜日(不定期)に計6回開かれる。月曜講義(月曜日の講義)は吉田キャンパス百周年時計台記念館で「ガリレオ・ガリレイと現代―世界天文年にちなんで」のテーマで行われ、水曜講義(水曜日の講義)は宇治キャンパス宇治おうばくプラザで講演者がそれぞれ時宜を得たテーマを選んで行われる。月曜講義のテーマは、天文学者ガリレオ・ガリレイ(1564―1642)が望遠鏡を作り天体観測を始めた1509年から400周年を記念した世界天文年にちなんだもの。受講料は無料。当日先着順で受けられる。お問い合わせは京都大学企画部社会連携推進課(電話075・753・2233)まで。

10月5日に行われた春秋講義・月曜講義の第1回目は、柴田一成・理学研究科附属天文台長がテーマ「ガリレイの見た黒点と太陽はどこまで解明されたか?」で講演を行った。理学研究科附属天文台は、花山天文台(京都市山科区)や飛騨天文台(岐阜県高山市)から成りたち、太陽観測などで成果を上げている。
冒頭に柴田氏は、附属天文台の創始者・山本一清(1898―1959)が一般の人々にアマチュア天文学を普及させた功績に触れ、ガリレオ・ガリレイの業績や世界天文年のスローガン「宇宙…解き明かすのはあなた」を紹介するなど、この春秋講義が広く市民に開かれる意義について述べた。

次に、天文台や太陽観測衛星「ようこう」(1991―2001)などから得られた太陽の磁場やエックス線観測といったデータを示し、黒点(しみ)やプロミネンス(紅炎)、フレア(太陽面爆発)、コロナ(外層のガス)といった活動や構造のうち今まで明らかになったものを説明。それでも太陽の三大問題(フレアの発生や黒点生成、コロナ加熱の仕組み)という謎が残されており、まだまだ天文学者が解明すべきことがあると語る。

この太陽の三大問題を解こうとして、日本が2006年に打ち上げたのが太陽観測衛星「ひので」である。柴田氏は、この「ひので」で太陽について新しく発見されたことを紹介。太陽の大気が予想以上に激しく活動していることや、いたるところにジェット(噴出した超高温のガス)やアルベン波(磁力線の波)があること、黒点やプロミネンスで謎の細かい構造や動く現象があることが見つかったという。

また柴田氏は講演で、太陽の活動は莫大であり、地球に及ぼしている悪影響(放射線など)があるため、「宇宙天気予報」が必要であると訴える。その一例として黒点の現れた数と気候変動の関係をあげ、黒点が少なかった時期が地球の寒冷な時期に対応していると述べた。これはフレアの生成に黒点の活動が関わっていることにあると指摘。現在、黒点の数が減少しているのでミニ氷河期が来ると予言するひとがいるとのこと。柴田氏はまだそのことであわてないようにという。

最後に、地球上の生命が今までいかに太陽活動の影響と関わってきて、人類が宇宙に進出するためにはどうすればよいかという問いかけを発し、その答えが太陽や宇宙の観測にあると述べて締めくくった。