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科学者の役割考えて 村上陽一郎氏来たる

2009.10.05

物質ー細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)で9月12日、「iCeMSインテグリティセミナーシリーズ」の第1回目のセミナーが「科学者の生き方と社会的責任」というテーマで行われた。

同セミナーシリーズは月1回のペースで全4回を予定。これから社会の最先端を担っていく科学者たちの精神的態度の養成がを目的とし、今回は主にその準備段階としての位置づけのものだった。講師は著書『科学者とはなにか』などで知られる村上陽一郎・東京理科大学教授。

はじめに「インテグリティ」や「サイエンティスト」などの用語の詳しい由来や意味の説明がされ、科学者の歴史や社会との関わり方の変化について話が進んだ。セミナーシリーズの趣旨文内にもある「インテグリティ」という用語は道徳的な信念や規範といった意味合いを持つ言葉。職業的科学者の歴史は浅くその発端は19世紀半ばで、当初は、趣味人たちが各々の自費でもって研究を進め、その知識や習慣の伝達も仲間内の閉じた輪の中で行われており、社会から大きく断絶されたスタイルであった。

しかし科学者に対して資金援助を行う財団や政府の出現や、行政や産業による積極的な科学の利用などがあり、ただの知的好奇心の充足のためのものであった科学が新たに「社会の発展への寄与」という側面を帯びるようになり、職業としての科学者が成り立つようになった。急増した科学者による不祥事も目立つようになり、委員会の設置や外部社会への説明責任の義務化など、科学が対外的に開かれたものへと変じていく経緯があった。そして今日では行政の意思決定の場への、専門家の立場からの意見提供による介入が求められるなど、ますますその閉鎖性を脱する動きが見られる。

講演後はiCeMS拠点長の中辻憲夫氏との対談や一般参加者による質疑応答があり、その後ジャズピアノ奏者の角田浩氏の演奏をまじえた交流会が開かれた。