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京大農学部シンポジウム開催

2006.08.01

京都大学農学研究科主催の「No Border Agric. 第三回 京都大学農学研究科シンポジウム 多様性の中の統一を目指して」が七月二十七日(木)、農学部総合館一階W-100講義室で行われた。会場では、 農学部や他学部の教授、学生などが席を埋め、演者の発表に耳を傾けた。 専攻、学科、部局の垣根を越えて積極的に大学の研究を内外にアピールしていきたいという主旨で始まった、京都大学農学研究科シンポジウムは今回で第三回に なる。このシンポジウムは農学研究科に所属する教授が、自分の研究の大まかな内容を壇上で一人ずつ 発表していくというもの。発表後には質疑応答の時間がある。

一つ目は農学研究科・応用生命科学専攻の加納健司教授による「生物資源から電気エネルギーを取り出す-次世代バイオ電池への夢―」だ。近年はエネルギー の利用による環境問題、二酸化炭素の問題が指摘されて久しい。クリーンなエネルギーの供給システムは、今日人間社会における重要課題の一つである。白金触 媒を用いた燃料電池は、一つの成果だが、現実には多くの問題も浮上している。 白金に替わる新たな次世代の触媒形、電池系として期待されるものの一つがバイオ電池だ。生物は必要なエネルギーすべてを酸化還元反応によって作り出してい る。バイオ電池とは生物の代謝、呼吸過程における酸化還元反応から、電気エネルギーを得るというもの。例えば、ヒトの場合一日におよそ糖600グラム分の 2000キロカロリーを消費するが、このエネルギーを出力に換算すると100ワットになる。バイオ電池は、環境への負担が少ない上、生物がエネルギー源と するすべての物質を燃料にすることができ、触媒としての酵素あるいは微生物は無限にあるなど、多くの利点がある。しかし、現状では、出力が低いこと、酵素 が安定しないこと、酵素の構築が難しいなど問題点も少なくない。加納教授は現在、バイオ電池のための酵素系に重点をおいて研究している。 もしバイオ電池が実現できれば、材料として炭素しか必要ないため、とてつもなく軽い電 池になり、必要な時に内部の液体を交換すれば、何度でも利用可能だという。また、様々なサイズの電池を作り出すことができ、家庭用の電子機器以外に、体内 に埋め込んでの利用も考えられる。
他にも食品生物科学専攻、安達修二教授による「ホットな水―亜臨界水と食品加工―」、現在は生命科学研究科、統合生命科学専攻の佐藤文彦教授による「植 物のもつ多様な有用物質生産機能とその高度利用 植物は、グリーンファクトリーになりうるか?―グリーンケミストリーの展望―」の発表があった。前者は、 加圧することにより100度から374℃の範囲で液体状態を保った水である、亜臨界水を食品加工に利用するための基礎研究について、後者は、遺伝子の分子 生物学的解析や分析技術を用いて、医薬品、色素、香料などに利用可能な植物から抽出される低分子化合物の生産性を向上させる研究の成果についての内容。
タイトルにもあるように、いわゆる学際的な目的のシンポジウムだが、発表されるテーマはいずれも興味深いものであり、これから進路を決める学生にとっても刺激になる内容だろう。シンポジウムは今回で終わりではなく、次回は十月に行われる。

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