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学位授与を厳格化、「学士力」を定義 中教審 答申まとめる

2009.01.19

大学の学士課程教育の改善策を検討していた中央教育審議会(中教審)は、 12月24日、「学士課程教育の構築に向けて」と題する答申をまとめた。答申では、新規大学の参入促進など、大学間の競争をあおることで教育の質を高めようとする市場化の改革手法の修正や、学位授与の基準を明確化し、国際的に通用するものにすべきとする方針が打ち出されている。大学の自主的な改革を通じて、これらの方針を進めてもらいたい、としている。

今回の提言で焦点となったのは、学位授与・カリキュラム編成・入学者選抜の3点。それぞれに大学と国に「期待される取り組み」が示されている。

学位授与では、「入りにくく出やすい」とされる日本の大学をOECD諸国の基準へ標準化し、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」への教育方針の転換を図る。方策として、大学は学位授与の基準を明確化し、透明性のあるものとする。国は、学士課程で育成する「21世紀型市民」の内容に関する指針(「学士力」)を示し、大学の取り組みを支援する。

カリキュラム編成では、特に学際化・多様化した文系において、カリキュラムの構造化が弱いと指摘。大学側には、科目選択の幅の制限も含め、年次をおった体系的なカリキュラムを編成するよう要望。成績評価については、教員の共通理解のもと、GPAをはじめとする成績評価基準を策定し、明示すべきとする。また、キャリア教育をカリキュラム内に取り込み、キャリア形成支援には教員も取り組む。単位として認定されるインターンとアルバイトを区別すべきとの指摘も見られた。

入学者選抜では、高校段階での学力を把握し、大学の初年次教育や入試に使用する「高大接続テスト(仮称)」を提案。センター試験との兼ね合いなど検討段階だが、学力を把握し向上させるシステムとして活用する。

高等教育に対する公財政支出はOECD各国で1%(対GDP比)であるのに対し、日本は0・5%。授業料が上昇してきたため家計負担が多くなり、教育の機会均等が果たされなくなってきている。大学の社会への説明責任を果たすのと引き換えに、国に対して財政支援の強化を訴えた。

◆学士力とは◆
 2007年9月10日、中教審小委員会が出した指針で、以下のような学習成果を要望している。
(1)知識・理解(文化・社会・自然)
(2)汎用的技能(コミュニケーションスキル・数量的スキル・情報リテラシー・論理的思考力・問題解決)
(3)態度・志向力(自己管理・チームワーク・社会的責任・倫理感・生涯学習力)
(4)総合的な学習経験と創造的思考力

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