文化

日韓の医学教育の変遷を知る 総合博物館講演会

2021.11.01

9月26日、京大総合博物館が主催する講演会「日韓における近代医学教育の歩み」がオンラインで開催された。イギュウォン・ソウル大学校医科大学医学科客員教授を講師に迎え、日本と韓国における医学教育の変遷について紹介された。

まず、イ氏は日本と韓国における現在の医学教育を比較した。両国は人口1000人あたりの医師数がほとんど同じであり、医学科で6年間の教育が行われる(韓国では医予科2年・医学科4年)など、よく似ていると指摘した。その一方で、医学部や医科大学の国公立の比率が日本の方が大きいこと、韓国では韓医師という漢方医学の医師が国によって認められていることなど、違いも多いと述べた。

次に、イ氏は現在に至るまでの両国の医学教育の歴史をスライドを活用しながら詳しく取り上げた。日本の明治期では、戊辰戦争の負傷兵の治療でイギリス公使館付医官のウィリスが従軍して活躍したという。ウィリスは「日本人医学生は役に立たない」として、従来の日本の医学教育に問題があると指摘し、自らは西洋医学を用いて多くの負傷兵を治療した。これは西洋医学の優位性・有用性を日本中にアピールすることにつながった。イ氏は「戊辰戦争は日本の医学の近代化を早めた」と指摘した。

一方韓国では、1907年に日本によって医学校・広済院・大韓赤十字病院が大韓医院に統合された。一般的に韓国併合は1910年に行われたとされるが、大韓医院への統合は医学教育や医療体制の韓国併合とも言えるため、イ氏は「保健医療分野に限って言えば、1907年に韓国併合が行われていた」と述べた。

最後にイ氏は、「日本と韓国は歴史的に色々あったが互いに重要な隣国である」と指摘し、現在はパンデミックの時代で未来が不確実になっていることを踏まえ、「政治やマスコミに振り回されることなく、協力することが必要だ」と強調した。

本講演会は、総合博物館で10月10日まで行われた企画展「医師になる!―京都大学の医学教育―」の関連イベントの一つにあたる。イ氏による本講演会を含めると、計3回の医学教育に関する講演会が行われた。(凜)

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