文化

戦争と対峙し続けるマンガ 「マンガと戦争展2」

2025.11.01

戦争と対峙し続けるマンガ 「マンガと戦争展2」

のれんの中に入ると四方にマンガの世界が広がる

7月12日から11月25日まで、京都国際マンガミュージアム(中京区)にて、「マンガと戦争展2」が開かれている。今回の展示は、2015年に開催された「マンガと戦争展」の続編として、戦後80年となる今年に向け企画された。展示では、戦争と食、「外国」の戦争など4つのトピックを中心に、さまざまな角度から「戦争」を描いたマンガを取り上げる。

本展の特色は、それぞれのトピック中にX軸/Y軸が設定され、マンガ作品が4象限に分類されている事だろう。軸には「前線/銃後」といったわかりやすいものから、「手段としてのマンガ/目的としてのマンガ」といった頭を捻らされるものまで、多種多様なベクトルが設定されている。戦争マンガを一括りに捉えるのではなく、各作品の異なる視点を理解しながら読むことが自然と促される仕掛けだ。展示に携わった学芸室員の大谷景子さんは「来場者の方が戦争について多角的に知り、独自の意見を持つきっかけになれば嬉しい」という。戦争を経験していない評者にとって、ステレオタイプ的に繰り返される「戦争」の中に、今まで自分の姿はほぼなかった。しかし、他者から与えられた印象で満足せず、自ら思考し、自分と戦争を結びつけて初めて、戦争と向き合うことができるのだと今回の展示から強く感じた。

今回の展示で、評者に新たな「戦争」を提示してくれた作品を一つ紹介する。ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによる原作を、小梅けいとが作画を担当してコミック化した『戦争は女の顔をしていない』だ。500人以上の第二次世界大戦の従軍女性を原作者が取材した記録であり、それぞれの女性が語る体験には目を剥くような事実が含まれている。だが、いずれも、その根底には共感できる心の動きが存在する。例えば、「恥ずかしいという感情は死への恐怖よりも強かった」というセリフがある。うら若い女性兵士が、戦場で血みどろになって死ぬことを恥じ、死ぬなら進軍の途中で見かけた花畑の中がよいと願うシーンだ。「恥ずかしい」という誰しも覚えのある感情と、「死への恐怖」という評者自身からは遠い感情が並列されている点が印象的だった。この作品を読み進めると、人物の言動に親近感を覚えた瞬間に、突然突き放されるような衝撃が待ち構えていることが多々ある。戦場という空間の異常性が際立つ一方で、作中の人物に共感することで戦争を「近い」とも感じることのできる作品である。小梅の繊細で少女マンガ的な親しみやすいイラストによって、原作よりもハードルが低くなっていることも本作の魅力だ。

本展では、前回の「マンガと戦争展」で紹介された作品も読むことができる。10年の歳月を挟んだ展示を見比べると、以前よりも、さらに多くの人にとって戦争が身近なものになっていることを実感する。取り上げられるマンガも、沖縄・原爆といった第二次世界大戦の記憶が中心となるものだけでなく、食や現在も続く戦争のような、イマ・ココの生活により近いテーマを扱う作品が増えている。1945年からは刻一刻と遠ざかる一方で、私たちの生活は決して戦争から遠ざかってはいないどころか、むしろ徐々に近づいているのだ。この現状の中で、一人ひとりがどう戦争と向き合うのか。こうした課題を提示し、悲惨な事実や現状を突きつけるだけではなく、本展は、訪れた人々に自主的な気づきを優しく促す側面を持ち合わせている。このナチュラルさも、マンガという媒体の持つアドバンテージの一つだろう。ぜひ足を運び、さまざまな切り口から描かれる多くの戦争マンガに触れてみてほしい。ミュージアムの開館時間は10時~17時(最終入館は16時30分)。毎週水曜休館。入館料は大人1200円。(燈)

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