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西村剛准教授 イグノーベル賞 ワニにヘリウムを吸わせる

2020.10.16

イグノーベル賞が9月17日に発表され、西村剛・霊長類研究所准教授ら5人の研究グループが音響学賞を受賞した。ヘリウムガスを満たした水槽でヨウスコウワニを鳴かせ、その声の出し方について解析した研究が評価された。イグノーベル賞の日本人の受賞は14年連続となった。

ヒトやトリは、喉から口にかけて空気を振動させる「共鳴」を用いて声を出すことが知られていたが、は虫類の声の出し方は解明されていなかった。本研究は、ヘリウムガス中において空気中よりも共鳴が起きる周波数が高くなることを用いて、ヨウスコウワニにヘリウムガスを吸わせる実験を行った。交尾期に異性の声を聞くと呼応して声を出すヨウスコウワニの特性を生かし、水槽内にヘリウムガスを注入して、事前に録音しておいたオスの声をメスに聞かせ、そのメスの声を録音・分析した。通常の空気を満たした場合とヘリウムガスを満たした場合を比較したところ、ヘリウムガスを吸ったヒトの声が高くなるのと同様に、メスの声が、ヘリウムガスを吸ったときに高く聞こえた。これによって、ヨウスコウワニが共鳴を利用して声を出していることが確かめられた。 

西村准教授は、音響学や形態学を専門とする霊長類学者である。京大大学院理学研究科博士後期課程を修了後、2007年から霊長類研究所准教授に着任。2013年から2014年にかけては、ウィーン大学認知生物学部において客員研究員を務めた。本研究は、ウィーン大学のステファン・レバー大学院生(当時)やテカムセ・フィッチ教授が中心となったものであり、実験は2013年にアメリカの動物園で行われた。

イグノーベル賞は、1991年にアメリカの「ユーモア科学研究ジャーナル」が創設したノーベル賞のパロディであり、人々を笑わせ、考えさせる研究に対して授与される。例年はハーバード大学で授賞式が行われるが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、授賞式はオンラインで開催された。今年は10の分野でイグノーベル賞が授与された。

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