脱炭素化で生じる格差を解決へ 炭素税の有効性を検証
2025.10.01
京大工学研究科・都市環境工学専攻の趙詩雅特定助教、藤森真一郎教授らの研究グループは、脱炭素化に伴う貧困・格差の拡大は、温室効果ガス排出に課する「炭素税」の収入を貧困層へ還元することで軽減可能だと発表した。一方で、アフリカ諸国ではその有効性に限界があることも明らかにした。今後の炭素税収の使い道について、示唆を与える結果だ。
研究グループは過去に、脱炭素化社会への移行が所得減少や食料・エネルギーの価格高騰を招き、貧困や格差に悪影響を及ぼすことを明らかにしていた。一方、その対策については不明確だった。そのため、本研究ではシミュレーションを用い、気候変動対策がもたらす社会への影響、また、その悪影響について炭素税収を活用した場合の軽減度合いを定量化した。
研究では世界180か国の将来を▼社会が化石燃料依存を継続▼脱炭素化を促進・炭素税収を所得に比例配分して還元▼脱炭素化を促進・炭素税収を一人当たり均等に配分して還元、の3つのケースに分けて比較分析した。
税収を比例配分するケースにおいて、脱炭素化は主にインド、サブサハラ・アフリカにおける貧困層に最も悪影響を及ぼし、貧困人口の増加につながった。また、低所得者層で消費がより減少する逆進性が見られた。一方、税収を均等配分するケースでは、2050年時点で貧困の悪化は完全に相殺され、低所得層へより大きい恩恵をもたらし、消費格差の縮小が見られた。しかし、このケースにおいても、30年時点では、生きる上で最低限の生活を送れない「絶対的貧困」の解消には至らないと示された。
今回の結果は、炭素税は低所得者に配慮した還元方法を採ったうえで、脱炭素化によって生じる貧困・格差の是正に有効であること、また、それでも短期的には貧困撲滅に限界があることを示す。研究グループは今後の展開について、気候変動の影響を考慮するほか、諸税や軽減税率を含めた細やかな政策分析を行いたいと述べた。
本研究成果は、8月27日に国際研究雑誌「Cell Reports Sustainability」で発表された。
研究グループは過去に、脱炭素化社会への移行が所得減少や食料・エネルギーの価格高騰を招き、貧困や格差に悪影響を及ぼすことを明らかにしていた。一方、その対策については不明確だった。そのため、本研究ではシミュレーションを用い、気候変動対策がもたらす社会への影響、また、その悪影響について炭素税収を活用した場合の軽減度合いを定量化した。
研究では世界180か国の将来を▼社会が化石燃料依存を継続▼脱炭素化を促進・炭素税収を所得に比例配分して還元▼脱炭素化を促進・炭素税収を一人当たり均等に配分して還元、の3つのケースに分けて比較分析した。
税収を比例配分するケースにおいて、脱炭素化は主にインド、サブサハラ・アフリカにおける貧困層に最も悪影響を及ぼし、貧困人口の増加につながった。また、低所得者層で消費がより減少する逆進性が見られた。一方、税収を均等配分するケースでは、2050年時点で貧困の悪化は完全に相殺され、低所得層へより大きい恩恵をもたらし、消費格差の縮小が見られた。しかし、このケースにおいても、30年時点では、生きる上で最低限の生活を送れない「絶対的貧困」の解消には至らないと示された。
今回の結果は、炭素税は低所得者に配慮した還元方法を採ったうえで、脱炭素化によって生じる貧困・格差の是正に有効であること、また、それでも短期的には貧困撲滅に限界があることを示す。研究グループは今後の展開について、気候変動の影響を考慮するほか、諸税や軽減税率を含めた細やかな政策分析を行いたいと述べた。
本研究成果は、8月27日に国際研究雑誌「Cell Reports Sustainability」で発表された。
