文化

教員から見た京大の問題点 公開シンポ「教員の立場で考える吉田寮問題」

2020.01.16

昨年12月19日、総合研究2号館の法科第二教室にて公開シンポジウム「教員の立場で考える吉田寮問題」が開催された。昨年4月に京都大学は吉田寮生20名を相手に訴訟を起こし、シンポジウムの一週間後には第3回口頭弁論を控えていた。今回のシンポジウムでは4人が登壇し、吉田寮問題をはじめ京大が抱える問題や矛盾について意見を述べた。司会は教育学研究科の駒込武教授が務めた。教員や学生の他、吉田寮卒寮生や関心を持つ一般市民も多く参加し、教室はほぼ満席となった。

1人目に登壇したのは文学研究科の伊勢田哲治准教授だ。伊勢田准教授は元吉田寮生であり、教員になってからも2017・18年度に学生生活委員会の一員として寮問題に関わった。伊勢田准教授は学生生活委員を務めた経験をふまえて、京大の吉田寮問題に対する姿勢について語った。2017年に公表された「吉田寮生の安全確保についての基本方針」が学生生活委員会の会議で俎上に上がらないままに突然出されたことや一昨年の9月に学生生活委員会に何の知らせも無く寮生との話し合いを打ち切ることが公表されたなど、京大は寮生のみならず学生生活委員を無視する一方的な対応を取ったと指摘。さらに、京大の教育理念や運営理念、自由の学風という京大の魅力・公的イメージの喪失を理由として、大学は今すぐ提訴を取り下げて対話による解決を目指すべきだと強調した。

2人目にアジア・アフリカ地域研究資料センターの木村大治教授が発言した。教授は、吉田寮自治会と大学の間で結ばれてきた確約について、責任ある文書だと指摘し、無効だとの大学当局の主張は全く根拠のないものだと指摘した。また、京大の現状について、執行部のみで決定がなされ、対話による解決を放棄していると批判し、京大の全構成員が当事者性を持つことの必要性を述べた(詳しくは7面の寄稿参照のこと)。

3人目には人間・環境学研究科の酒井敏教授が登壇した。京大当局の雰囲気が近年悪い方向へと変化していると指摘し、その一例として「オルガ像」の一件を取り上げた。昨年の入試で「オルガ像」という工作物を学内に運んだ学生が入試の妨害を行ったとして処分が検討されている。酒井教授は当時総合人間学部の入試委員長であったが、当該工作物の件を知らされず、正式な会議で取り上げられたことも無かったにもかかわらず、執行部により処分が検討されていると明かし、違和感を覚えたと述べた。その上で、こうした処分検討や吉田寮提訴をはじめとする動きを引き合いに出して、京大の現状での問題点として、京大の多様性や独立性が薄れつつあるのではないかと疑問を投げかけた。

4人目である法学研究科の高山佳奈子教授は法学者から見た京大の問題点を話した。まず、京大の良い点として多様な人材を輩出していることを挙げ、その上でかつて自らの研究室に属していた元吉田寮生の留学生を取り上げて、吉田寮が日本人のみならず留学生もいる多様性のある空間だと強調した。続いて、立て看板問題について触れ、京大が論拠とする京都市の条例は明らかに憲法違反であり、合憲だとしても大学の対応は違法であると指摘した。

その後、質疑応答の時間が設けられた。ある教員は「昨年9月の学生への無期停学処分に関して教授会の決定が執行部に根拠もなく無視された。京大の一方的かつトップダウン的な決定をどのように防げばよいか」という質問した。昨年9月に処分が下された総合人間学部の学生について教授会では有期停学処分が妥当として決定し理事会に進言したが、理事会は教授会の決定を覆し無期停学処分とした。これに対し司会の駒込教授は対策として「教員間で情報共有をすることが第一歩である」と返答した。最後に、ある吉田寮生は登壇した教員など吉田寮問題に危機感を持ち協力をした人々に謝辞を述べ、その上で授業料値上げに言及し将来京大に起こりうる問題だとしてより多くの人が当事者性を持ち、声を上げていくことを訴えた。(阿)

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