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研究上のバリアを考える 京都大学バリアフリーシンポジウム

2017.09.16

9月9日と10日、京都大学バリアフリーシンポジウムが理学研究科6号館で開催された。シンポジウムは3部構成で、このうち第2部では「理を操る」と題し、障害当事者である4人の研究者が、自身の研究テーマや研究をする上でのバリアについて語った。
日本社会事業大学の木下知威氏(建築計画学・建築史)は、研究をするなかで出くわすバリアとして、学術的な会合での情報保障の問題を取り上げた。聴覚に障害を持つ木下氏にとって、学術的な会合では、自身の手話を通訳してもらうなどの情報保障が必要だ。しかし、情報保障をめぐって主催者との間にヒエラルキーが生じ、自身の行動を常に管理されるなど、自由を制約されてしまうことがあるという。また、2016年4月に施行された障害者差別解消法が、社会的障壁の除去の実施について「合理的配慮」を的確に行う環境の整備を義務化したことに関し、あいまいな「合理」や「配慮」といった言葉が圧力を持ってしまい、情報保障を依頼する際に人間関係を壊しかねないことについて、木下氏は懸念を述べた。そのうえで、「合理的配慮」という言葉を使わずに関係者への交渉をしていくことが必要だと語った。大阪大学文学研究科の後藤睦氏(日本語学)も、聴覚に障害を持つ自身の体験から情報保障における難点を挙げ、学会の通訳で通訳者が内容を理解し、正しく伝わるように情報保障を整備することの難しさを指摘した。情報保障のための準備のハードルは高く、聴覚に障害を持つ研究者にとってのバリアになっていると指摘した。
本シンポジウムは、障害者差別解消法の施行により検討が進められている「合理的配慮」の「理」を問い直すことを狙いとして、京大の学生総合支援センターが開催した。障害当事者を含めた様々な分野の専門家が招かれ、講演や対談を行った。 (小)

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