文化

カレー作りに9ヶ月?! 関野吉晴×山極総長 映画公開記念対談

2017.10.16

8日、映画『カレーライスを一から作る』の公開記念企画として、対談『一から作ることによる学び』が開催され、山極壽一・京都大学総長と、探検家で医師でもある関野吉晴氏が対談した。 映画「カレーライスを一から作る」は、武蔵野美術大学で開かれた関野氏による課外ゼミの様子を撮った作品。野菜や米・肉・スパイス・塩・食器まですべて一からカレーライスを作るという、9ヶ月にも及ぶ取り組みを描いたドキュメンタリーだ。公開は2016年だが、今年10月7日から27日まで京都シネマで上映されている。 対談は課外ゼミの話題からスタートした。関野氏によると、題材としてカレーを選んだ理由は、肉・野菜・スパイスなど多くの材料が必要で、色々なものを一から作る経験ができるからだという。辛さが苦手な人はいても、カレー自体が嫌いな人は少ないというのも一因だ。何かを一から作るという趣旨が興味を引いたのか、当初200人ほどの学生が集まった。ところが、はびこる雑草や成長の遅さ、害虫などに悩まされる中で人が減り、カレーの完成まで残ったのは30人程だったという。山極総長はこの取り組みを、「生き物の網の目の中で生きているという、忘れられてしまった意識を呼び起こさせるもの」だと評した。 対談が進むにつれて内容は徐々に映画から離れ、それぞれのアマゾンやアフリカでの生活を踏まえた話に移った。関野氏は今回の課外ゼミのヒントになったというアマゾンの人々の暮らしについて、身の回りのものを全て素材から作っているため、原材料のわからないものが一つもないのだと語った。ゼミの中で取り入れていた、手取り足取り教えずに生徒たち自身に答えを出させるという手法も、彼らのものと同じなのだという。山極総長からの「中には危険なこともあって心配ではないか」という質問には、「だからちゃんと見守ってないといけないんだよね」と述べた。今後の予定について聞かれると、「安全に気を付けないといけないし、めんどくさいからしばらく学生はいいかな」と笑って答えていた。 その他にも、大学病院で腸内細菌を移植できるらしい、アフリカでは毒を入れられないよう食べ物を残したまま席を外さない、アマゾンでは呪術的な懸念から検便をほぼ誰も持ってきてくれなかったなど、予想外の方向に広がっていく興味深い内容で参加者たちを惹きつけていた。講演会の後にはカンフォーラで山極総長が監修したブルーシーフードカレーの試食会と関連書籍の販売があり、多くの人が足を運んでいた。(鹿)

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