文化

ひろげよう、フィールドの世界 自然を多面的に見る

2017.04.01

3月19日、京都大学フィールド科学教育研究センターが主催する公開シンポジウム「ひろげよう、フィールドの世界」が益川ホールで開かれた。理系以外の分野から自然を考えることをテーマに、4人の講師が講演した。

山極総長の開会のことばの後、講師陣は自然やフィールドについてそれぞれの専門や立場からスライドを使いながら講演した。吉岡崇仁・フィールド科学教育研究センター長は、現代の学問では人文・社会学といった文系と自然科学のような理系が分離し切れないといい、特に人間や動物が関係する物事には相反する複数の考え方が同時に成立する場合が多いと語った。その例として芦生研究林の鹿害を挙げ、下草などの植生保護のためには鳥獣保護対象である鹿を駆除する必要があり、そのバランスのとり方を模索しなければならないと述べた。

伊勢武史・フィールド科学教育研究センター准教授・芦生研究林長は「人はなぜ、森で感動するのか」と題し、人間が好んで自然を見に行ったり食用にならない観葉植物を育てたりする心理について考察した。その中で進化心理学の考え方を取り上げ、人の美的感覚や森で感動する心が自然淘汰の中で生存に有利に働いたのだろうと結論付けた。

広井良典・こころの未来研究センター教授は、人の感じる幸福は経済力などの数字では測れないとして、人の感覚と自然の関係について語り、自然と関わることが精神的疲労回復に役立つと述べた。また、神社で水力発電を行う取り組みを紹介し、伝統文化と現代的課題をつなぐことで既存の問題への新たな解決策が生まれる可能性を示唆した。

華道家で池坊短期大学非常勤講師を務める高林佑丞氏は、木物・草物・通用物といった、生物学とは異なる華道独自の植物の分類を紹介した。また解説とともに舞台上で生け花を実演し、会場を大いに沸かせた。

休憩時間を挟んで開かれたパネルディスカッションでは、来場者からの質問を参考にしつつ、開会のあいさつをした山極総長を加えた5人で意見を交換した。

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