文化

〈書評〉厚焼サネ太著『お猫はん 京都ねこ歩き』

2016.10.01

猫歩きススメ

生粋の京都人である作者が、京都の街で、猫に出会える「猫スポット」を紹介する本だ。京都駅より北側の8スポットが紹介されていて、京都御所に生息する「御所猫」や、哲学の道の「猫ワゴン」などが取り上げられている。鴨川河川敷の猫スポットは、京大生も身近に感じられるだろう。猫を愛でる地域住民たちや、店の看板猫と作者のふれあいなど、猫をめぐる交流が描かれていてほっこりするし、作者の猫への愛情を存分に感じる。

紹介されているスポットの一つに、梅小路公園がある。京都市水族館などレジャー施設が密集し、大勢の人で賑わうこの公園には、人だけでなく猫も多く集まる。しかしこの猫たちは、ただの野良猫ではない。NPO法人「京都どうぶつあいごの会」の人たちが中心となって飼育している「梅猫」たちだ。京都府は、野良猫が餌付けされ繁殖することにより、糞尿や鳴き声の被害が後を絶たないことから、去年、猫の餌付けに罰金を科すという条例を公布し、賛否両論を巻き起こした。増えすぎた猫による被害が問題となっているなか、「京都どうぶつあいごの会」は、野良猫を捕獲し(TRAP)不妊手術を施し(NEWTER)元の位置に戻す(RETURN)、TNR運動を行っている。野良猫の平均寿命は3年ほどなので効果は早く、元々80匹ほどもいた梅猫たちは、5年の活動で25匹ほどまで減ったという。

野良猫を減らすべく始まったこの活動は、人と猫の適切な関係を築く取り組みと言えるだろう。猫が好きな人も、被害を被って猫が嫌いになってしまった人も、そして猫自身も、幸せに暮らしていけるのがいちばんである。人と猫、適当な距離感を保って接するのが良いだろう。(遑)

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