文化

第18回SAGAシンポジウム 大型類人猿は生き残れるのか

2015.12.01

11月14日と15日、京都市動物園でアフリカ・アジアに生息する大型類人猿を支援する集会「SAGA18」がSAGA18実行委員会により開かれた。SAGAの京都での開催はこれで2回目となる。

SAGA(略称:サガ、Support for African/Asian Great Apes=アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い)は、オランウータンやゴリラ、チンパンジーなど大型類人猿の野生における保全、飼育下における福祉向上、人類の進化の隣人としての非侵襲的な研究の実施を目的とした市民の自主的な集いとして始まった。18回目となる今回は、京都市が2009年から続けてきた全面リニューアルが終わり、11月8日にグランドオープンした京都市動物園での開催となった。

1日目は京都市長・門川大作氏による開会挨拶に始まり、講演やポスターセッション、総合討論ののち交流会が行われた。京都大学霊長類研究所の古市剛史氏はボノボの事例を挙げて、絶滅危惧種に指定されている動物たちを取り巻く実情を紹介。「希少動物をめぐる国際的な動きの理解の一助にしたい」と述べた。

2日目は京都府文化スポーツ部理事・雨宮章氏の趣旨説明に始まり、次いで京大総長・山極寿一氏が登壇、「ゴリラの魅力とは何か?」というタイトルで講演を行った。

山極総長は、理学研究科教授当時に専門委員としてSAGAに参画した。講演の内容は、かつて暴力の権化とされ、いろいろな映画や作品のモデルとなっていたゴリラが、近年になって人気を博している理由を、ゴリラと現代社会の分析から探るというもの。スライドで写真や動画を示しながら、山極氏はゴリラの生態や習性をユーモアを交えて話した。

講演の中で、山極総長は「ゴリラはとても遊び上手だったり、オスが付きっきりで育児をしたりと、人間以上に人間的な側面もある」と説明。自らがゴリラを観察した経験を踏まえ、さまざまな変化を遂げてきた人間社会とゴリラの社会を照らし合わせて紹介した。

京都市は動物園リニューアルの他、ケニアから寄贈された仔ゾウの繁殖プロジェクトや、2日目に発表がなされた動物園、府立植物園、京都水族館、青少年科学センターの連携活動などにも取り組んでいる。4つの生物系博物館が連携してイベントを行うことで、大人だけでなく子どもたちにも生命に触れる機会を提供することが目的だ。

「このままでは動物園から動物が消えてしまう日が訪れるかもしれない。大型類人猿をはじめとする希少動物の保護への取り組みを、子どもたちにつなげていきたい」と、雨宮理事は語った。(杏)

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