文化

兵庫県立美術館 19世紀 印象派の傑作が日本初上陸 クラーク・コレクション展開催

2013.06.16

6月8日から兵庫県立美術館で「奇跡のクラーク・コレクション――ルノワールとフランス絵画の傑作」が開催されている。クラーク美術館は米国のウィリアムズタウンに位置し、印象派を中心に近代の西洋絵画のコレクションで知られる。本展覧会ではそれら世界屈指のコレクションのうち19世紀のフランス絵画を中心に73点が展示されている。

本展覧会の見所は何といっても印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841―1919)の作品だろう。22点の作品が展示されており、その数、質ともに日本にいながらにして見られる事は「奇跡」とは言わないまでも、かなり貴重な機会には違いない。ルノワールは陶器の絵付け職人として出発し、パリのアトリエでモネやシスレーなどと交流しながら印象派展に数多くの作品を出品する。1880年代には形態を軽視する印象派に疑問を抱き、イタリア旅行をきっかけにラファエロらのルネサンス美術を学んだ。その頃より輪郭線が硬く、落ち着いた色調の古典主義風の作品を描き始めるが、晩年には再び豊かな色彩へと回帰する。本展には1870年から90年にかけての作品が展示されており、初期の作品とイタリア旅行を挟んだ後の作品で表現技法がどのように変化しているかに注目して見ると面白い。

また、ルノワールと言えば鮮やかな色彩と独特の筆触で描かれる瑞々しい人物画でよく知られるが、本展では『タマネギ』のような日常的なモチーフを描いた作品も見る事が出来る。シンプルで少々地味な作品だが、その精緻で生き生きとした質感は光の効果を追求したルノワールの鋭い観察眼を感じさせる。この『タマネギ』はクラーク美術館創始者で収集家のスターリング・クラークも折に触れては1番のお気に入りと話していたという。ルノワールのファンならば一目見ておきたい作品である。

本展にはルノワールの他にもコロー、ミレー、ルソーなどバルビゾン派の作品やモネ、ドガ、シスレー、ピサロなどルノワールと同時期に活躍した印象派の作品、ジェロームなど19世紀のアカデミスム美術を代表する画家の作品も展示されている。とりわけ、ジェロームの作品はその自然主義的でリアルな表現技法もさることながら、19世紀における西欧人の異国へのステレオタイプなまなざしを見て取れる点は大変興味深い。

現在、クラーク美術館はリニューアルを行っており、それに伴い貸し出されるコレクションが3年かけて世界を巡回している。本展はその一環で日本では今回を最後に、その後は韓国、中国へと旅立つことになる。会期は9月1日まで。休館日の毎週月曜日を除いて連日10時から18時まで開館している(金・土曜日は20時まで)。なお、7月6日にはクラーク美術館の改修に携わる安藤忠雄氏による記念講演会「芸術の力」が催される。(羊)

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