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「京都大学特色入試」実施 2016年度入試より全学部で導入

2013.04.01

3月26日、京都大学は2016年度入試から「京都大学特色入試」を実施することを発表した。会見には、松本紘総長と淡路敏之教育担当理事のほか学部長など各学部の代表者が臨んだ。松本総長は、京都大学の求める自発的・能動的に学び、将来各界で積極的に活動する人材の獲得のためには新しい入試の導入が必要である、とその強い意気込みを語った。

特色入試では、志願者に対して「①高等学校での学修における行動と成果の判定」に加え「②個々の学部におけるカリキュラムや教育コースへの適合力の判定」がなされる。①は、調査書のほかに出身高校の学校長が作成する「学業活動報告書(仮称)」、受験生が用意する「まなびの設計書」などの書類を審査することで行われる。「学業活動報告書(仮称)」では、受験に直接関係ない教科に志願者がどう取り組んだかを評価するという。また、数学オリンピックや国際科学オリンピック出場なども、「顕著な活動歴」として評価される。

そして②は各学部で実施される選抜により行われる(図参照)。選抜方法の中で目を引くのは、教育学部で行われるパフォーマンス評価だ。会見で前平泰志教育学部長は、本評価では、従来の学力試験で評価できない能力をいかに測るかという問題意識から、知識や技能の運用能力を評価できるような論文、討論などの課題を出す、と話した。また、経済学部では、特色入試の導入にともない前期試験の論文入試が廃止される。

特色入試の実施時期は、法学部が前期試験の後を、他の9学部は前期試験の前を予定している。特色入試の受験者数が募集人数に届かない場合は、不足した人数を前期日程の募集人数に加えるという。

会場の報道陣が「AO入試」という呼称を用いて質問した際、総長と理事は、この入試はあくまでも京大特色入試であると述べ、従来のAO入試とは異なるものであることを強調していた。

昨年6月の会見で松本総長は、ペーパーテストの比重が大きい入試では、京大が求める自発的な学びをする人物の獲得が難しくなっている、と現在の入試制度の問題点を語り、諮問機関などで改革案を検討していることを明らかにした。同11月には「京都大学入試改革検討本部」を設置し、入学試験の実施方法の調査や入試改革に関わる高大連携事業の検討を進めていた。

入試企画課によると、入学試験の検討は後期試験の廃止以来、各学部で重ねられてきたという。

2005年、京大は後期試験を2007年度入試より廃止することを決定した。そして、後期廃止以後、推薦入試やAO試験を実施せず、前期試験のみを行ってきた。しかし、国大協(社団法人国立大学協会)が掲げる入学者選抜制度の基本原則の一つに、国立大学の2次試験は、前期、後期試験に「分離」し、定員を前期、後期試験に「分割」するという「分離分割方式」により実施することがある。また、「分離分割方式の弾力化」として、分割比率の少ない日程(京大では後期廃止により前期と後期の募集比率は10対0となり、後期試験がこの日程にあたる)には、推薦入学・AO入試などの募集人員を含めてもよいことなどを挙げている。京大ではこの基本原則に合わせるために、「入学試験委員会」などにおいて後期復活も含め、対応を模索していた。そして昨年の6月から7月ごろに各学部において特色入試の導入が決定されたという。実施年度は、新学習指導要領が施行される2013年度に入学した高校生が、大学の受験資格を得る2016年度に定めた。また、文科省の『平成25年度大学入学者選抜実施要項』では、入試の変更が「入学志願者の準備に大きな影響を及ぼす場合には、2年程度前には予告・公表する」ことが求められている。そのため、特色入試の内容が固まってきたこともあり、このタイミングで発表を行ったという。

最終的な募集人員、実施時期などについては現在検討中であり、詳細は今年12月から来年3月の間に公表するとしている。

各学部の選抜方法(会見で配布された資料より作成)

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