文化

〈京大雑記〉入試改革は失敗する

2013.01.16

1月5日の毎日新聞朝刊に、松本総長のインタビューが掲載された。そこでは入試改革について「受験勉強ばかりでなく、(中略)幅広い経験をしてきた人に入試のバリアを少し下げる」と述べている。つまりは、学力以外にも基準を設ける、基準を多様化する、ということだろう。「入試の技術だけ身につけて大学に来る」  これは実際にある問題だと思う。だが基準の多様化は、その解決にはならない。

問題の焦点は、大学の求める「学力」を受験生が身につけないことにある。「学力」を身につけず「入試の技術」だけを身につけて入学してくるから、大学での勉強がうまくいかない。この問題の解決策は、単純に言えば、受験生が「入試の技術」ではなく「学力」を身につけることだ。しかし、松本総長の提示する解決策=基準の多様化は、「学力」を議論の対象外へ追いやってしまった。どうやって「学力」を身につけるのか  最も大切な視点が完全に欠落している。基準の多様化により、たとえ「入試の技術」を身につけなくなるとしても、「学力」を身につけることがなければ大学での勉強は今と何も変わらない。むしろ受験勉強への比重が減る分、ひどくなるかもしれない。これでは入試改革が大学生の学力改善と結びつくはずもない。まずは「学力」と「入試の技術」を直視すべきだろう。

京大の入試改革は、松本総長の方向で行くと間違いなく失敗する。目的に対する手段が妥当ではないからだ。最近、入試改革検討本部が設置され、議論が本格化してきたと思うが、そこでは慎重に議論され、適切な方策が出ることを願う。(朴)

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