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山中教授 ノーベル賞受賞 iPS細胞作製からわずか6年

2012.10.17

10月8日、スウェーデンのカロリンスカ研究所は2012年のノーベル医学・生理学賞を京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授と英国のジョン・ガードン博士に授与することを発表した。両者は成熟細胞が初期化し多種類の細胞に分化しうることを発見した功績を称えられ受賞した。

山中教授は2006年にマウスの体細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を世界で初めて作成し、翌年に人の体細胞からiPS細胞を作製した。iPS細胞は様々な組織や器官の細胞に分化する能力を持つため、人体では出来ない医薬品の試験への利用やある組織に病気を抱える患者の体細胞からiPS細胞を作成し、そのiPS細胞からその組織を作成し患者自身へ移植するなどの応用が期待されている。一方ガードン博士は1962年にアフリカツメガエルを用いた実験で、細胞分化をとげた細胞の核には個体全体を作り出す遺伝情報が含まれている事を示した。

同日、京都大学は山中教授の受賞をうけて記者会見を開いた。会見で山中教授は「ノーベル賞は日本という国に支えられて受賞できました。今の思いを一言でいうと感謝です」と受賞の感想を述べた。一方で「うれしいが責任を感じている。まだiPS細胞技術は本当の意味では医学や創薬に役に立っていない。さらに研究を続け一日も早く本当の意味で社会貢献をしたい」と述べまだ道半ばであることを強調した。そのうえ作製する際に受精卵の発達を止めるES細胞(胚性幹細胞)と異なりiPS細胞は倫理的な問題がないということで期待されているが、マウスでiPS細胞が卵子まで成長した事に触れ、iPS細胞も倫理的な問題を含む面があることに言及し、倫理的な議論を社会全体でする必要があることも述べた。

iPS細胞とは iPS細胞(induced pluripotent stem cell)は2006年に山中教授の研究グループによって作製された人工多能性幹細胞。人などから取り出した体細胞に特定の遺伝子を導入し培養することにより作成され、さまざま組織や臓器の細胞に分化する能力を持つ。

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