文化

〈生協ベストセラー〉アリカ『京都ぼちぼち墓めぐり』(光村推古書院)

2011.05.19

寺の町とも言われる京都には多くの偉人・著名人の墓がある。織田信長や豊臣秀吉などの戦国武将、紫式部や与謝蕪村などの文人、湯川秀樹や堂本印象といった近現代の著名人たちなど。何百年もの時を経たものもあり、それぞれ遺族や子孫、或いはゆかりのある人物が代々管理している。

本書はそういった京都の墓所巡りのバイブルとなる一冊だ。京都を6つのエリアに分け、それぞれのエリアの偉人達の墓を紹介している。墓石の写真に加え、人物一人一人のエピソードも豊富に載っている。

京大周辺では、平安時代末期、一ノ谷の戦に16歳で参戦し討死した平敦盛が金戒光明寺に眠っている。彼を討った熊谷次郎直実は、息子と同じ年頃の少年を討ったのを機に、法然上人を訪ね、出家したという。また、西福寺には読本作家の上田秋成の墓がある。江戸後期に生まれた彼は、国学者・歌人・俳人といった顔も持っていた。幼い頃に疱瘡で手が不自由になったものの、中国の白話小説や日本の古典から怪異譚を綴った『雨月物語』は多くの作家に影響を与えた。その他にも戦国武将の山名宗全や日本映画史の巨匠・溝口健二など、百万遍周辺にも多くのスポットがある。

とはいっても、これらの墓の多くは一般墓地にあるため、当然ながら観光用に一般公開されているわけではない。お参りするには、寺院の住職や墓地の管理人に申し入れるべきだろう。また墓石が傷んだり、古いものは風化して損傷することもあるので、直接触れたり飲み物をかけるのも止めるべきだ。お参りの際には、故人を偲ぶ気持ちを持っていくのが大切だ。(書)