文化

〈書評〉書を携えて美術館へ行こう 『関西ミュージアムガイド』

2025.07.16

〈書評〉書を携えて美術館へ行こう 『関西ミュージアムガイド』
京都は美術館の街だ。街を歩けば至る所に美術館がある。散歩が好きな評者にとってはそれだけでも十分な発見で、楽しみの1つだ。それくらい街に溶け込んでいるのに、一歩足を踏み入れれば、そこには建物と展示品の1つ1つが織りなす特別な空気が流れる。本書では、そんな「非日常」を味わえる美術館を、京阪神エリアを中心に80件紹介する。

編集制作と取材執筆を行ったのは京都に本拠地を置く編集社・アリカだ。誰かにとって大切な「在り処」、そしてそこにある何かを発掘することを理念としている。本書でも美術品はもちろん、併設するカフェで味わえるスイーツや席から見える風景、BGMまで空間を構成する1つ1つの要素を紹介してくれる。

第1章「この美術館に行きたい!」では、「空間に値打ちあり。」「ほとけ様に胸キュン。」などテーマ別で美術館を紹介する。名前は知っていてもどこか高尚に感じて距離を置いてしまう美術館も、親しみやすいテーマによって自然と興味が惹かれる。訪れたことのある場所もページをめくる毎に新たな発見があるから、読んでいるだけでも美術館の楽しみを味わえる。

空間というのは美術館の中だけにとどまらない。本書では、美術館へ向かう道中から、鑑賞後の周囲の散策スポットまでを案内してくれる。第2章「京阪神ミュージアムさんぽ」では、大阪・中之島、京都・岡崎、神戸・三宮に焦点をあて、美術館を中心に街全体を紹介する。知っている街も美術館を通して見ると景色が変わるのが面白い。

これだけの情報量でありながら、旅行雑誌によくある紙面を写真と文字で埋めつくすような感じはしない。むしろ構成は、対照的に控えめでゆとりを持たせたような印象を受ける。だからこそ、実際に美術館へ行ってその空間を体験したいと思わせられる。本書を片手に、その余白を埋めるつもりでぜひ美術館に訪れてほしい。(省)

◆書誌情報
『関西ミュージアムガイド』
朝日新聞出版編著
2025年
1600円+税

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