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「司法インフラ」としての法曹を守る 司法修習生の給費制維持を考えるシンポ

2010.08.06

7月7日、時計台記念館国際交流ホールにて、「司法修習生の給費制維持を考えるシンポジウム」が開かれた。主催は同実行委員会。京都弁護士会司法修習生給費制維持緊急対策本部(以下、対策本部)が後援し、法学部自治会、司法研究会、現代法学研究会が協賛した。このシンポジウムは、司法修習生への給費制度が2004年11月の裁判所法改正によって2010年11月より廃止され、代わりに貸与制度が置かれることを受け、給費制維持を求めるもの。50名ほどの聴衆の多くは法科大学院生や法学部生だった。

シンポジウムでは古家野彰平弁護士(対策本部事務局次長)が、給付制度の意義と貸与制が導入されることになった経緯を説明した。現在の法曹制度では、法曹資格を得るためには法科大学院を終了し、司法試験に合格した後、1年間の司法修習を終了しなければならない。司法修習生は各地の裁判所へ派遣され、裁判所(民事/刑事)、検察庁、法律事務所でそれぞれ実務を学ぶ。この際修習生には修習に専念する義務が課され、副業が不可能になる。そのため、これまでは月額20万円程度が給費されていた(賞与、各種手当あり)。この給費制度は戦後、裁判所の戦争協力の原因となった官僚的な法曹養成制度の反省に立ち、法曹一元制の理念のもと、それを保障する制度として導入された。その趣旨は①「法曹に貧富の差を持ちこませない」、②「修習生は、どの法曹を目指すかによって待遇に差別されず、法曹三者を公正に見、将来を選択できる」、③「修習生は、国民の税金で養成されることにより、司法制度の一翼を担うという使命の自覚と高い公共心を醸成する」ことだと古家野弁護士は言う。一方の貸与制は受益者負担の原則に立ったものであるが、修習生に過度の経済的負担を強いるだけでなく、それにより法曹の公共心が失われる恐れがあるとし、給費制の維持を訴えた。

また、畑地雅之弁護士(対策本部員)が収入のほとんど得られないボランティア的側面の強い業務として、自身が担当する携帯電話解約料事件を紹介し、「司法インフラ」としての法曹を強調した。その後の質疑応答では、「(給費制度維持を求めるのではなく)妥協案で攻めるという視点はなかったのか」との質問に、主催者側が「制度の維持が目的」と答えるなど、活発な議論が交わされた。

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