文化

〈講演会〉DeNA創業・渡辺氏が講演 京大出身、「冒険の旅」語る

2025.02.16

〈講演会〉DeNA創業・渡辺氏が講演 京大出身、「冒険の旅」語る

講演する渡辺氏(ぶんこも提供)

1月24日、京都大学構内の「ぶんこも」にて、京大総合人間学部出身の起業家・渡辺雅之氏が講演した。渡辺氏はDeNA社の共同創業者であり、近年では発展途上国向けの学習サービス「Quipper」を立ち上げたほか、株式会社メルカリや株式会社タイミ―の社外取締役を務めている。本講演では渡辺氏が「浪漫と算盤」をテーマに、日本と世界の投資格差や、起業家という生き方、社会起業とは何かについて語った。

初めに渡辺氏は、日本と世界の投資格差について述べた。現在、革新的なアイデアを軸に急成長を目指す「スタートアップ企業」のうち、時価総額10億ドルを超える「ユニコーン企業」は中国・アメリカの企業に多く、日本の企業には少ない。渡辺氏によるとこの原因の1つは、アメリカやイギリスと違い、日本ではそれらの企業に投資する投資ファンドなどが、倒産の際に創業者個人に債務負担を求める点にあるという。失敗が許されない状況下では挑戦の数が増えにくい。ただ、「スタートアップ創出促進保証制度」など、近年日本でも個人保証のない形の投資も整備されていると渡辺氏は語った。

次に起業家という生き方について述べた。渡辺氏は、起業は仲間や賛同者を集め、未来を予想する地図を描く「冒険の旅そのものだ」と語る。起業すれば様々なことが自然に身につき、成功した場合の利潤も大きくなりやすいという。しかし、渡辺氏のように一定の成功を納めた者の背後には上手くいかなかった人々の「屍の山」がそびえたつことも確かだ。それでもなお、一から起業したという事実は、低迷する企業にとって改革のための人材としての評価につながる場合が多く、起業に完全な失敗はないと述べた。

最後に、「社会起業」について説明した。これは社会的な課題解決や価値創造を目指す起業だ。起業家にとっては、「社会起業」と打ち出すことで達成条件が生まれ運営が制限される代わりに、熱意ある人材の採用やメディアの利用がしやすくなる。渡辺氏によると社会課題の解決につながるかどうかは起業家の解釈に委ねられる面も大きいという。例えば広告会社は過剰な広告で人々の時間を奪うと一般に考えられがちだが、「価値ある広告で無為な時間を有意義な時間にする」という視点に立てば課題解決につながると言える。このように、社会起業の定義はあいまいであり、全てが社会の役に立つわけではないことも理解すべきだと述べた。その上で、社会起業家を事業立ち上げの段階から支援する「エンジェル投資」が社会的に重要だと語った。

講演後は質疑応答が行われた。既に起業した人や起業を考える人、興味で立ち寄った人など様々な背景を持つ人々が質問し、渡辺氏と熱意を持って対話した。講演会は、渡辺氏の「京都大学で何かを教えるのが夢だった。ありがとうございました」という言葉とともに、拍手喝采の内に閉会した。(雲)

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