〈講演会〉「国際協力で環境を守れ」 フィンランド首相講演
2025.01.16

講演するペッテリ・オルポ首相
始めに、首相は学生時代の活動が自分の政治家人生につながったとして、学生に「アクティブ」でいるように呼びかけつつも、「ちゃんと卒業はしなさい」と冗談を言って会場を和ませた。
その後、首相は本題の気候変動について言及した。財務相時代から気候変動対策に取り組んできた首相は、気候変動の影響が既に日常生活に出ているとし、社会全体の行動で炭素排出を止める必要性を指摘するとともに、その取り組みは「社会にとって責任であるだけではなく、好機でもある」と強調した。
理由として首相は、気候変動対策は産業や国境を超えた大規模な投資を必要とすることを挙げた。首相によると、フィンランド政府ではクリーンエネルギーの民間投資を促すとともに、政府自らもバイオマスの生産や炭素の吸収といった試みに投資しているという。さらに、民間企業と大学で環境関連の事業や研究を活発に行うなど、フィンランドでは政府や企業、研究機関、そして一般市民の連携を通し、クリーンエネルギーの分野で先進国となることを目指していると述べた。実際、フィンランドは1990年以来、クリーンエネルギーと原子力発電の組み合わせによって、経済成長を維持しながら二酸化炭素排出量を36%削減し、電力の90%以上を非化石燃料で賄ってきた。
最後に首相は、未来を担う学生の気候変動対策への参加が「極めて重要」だと語った。地方、国、そして世界レベルで、若者が意思決定に参加できる場を作る必要性を強調し、若者が意思決定に参加できるフィンランドの仕組みや、環境教育の取り組みを紹介した。「これからの道は険しいが、フィンランドが世界の気候変動対策を先導する」と決意を述べ、世界各国、特に日本との連携に期待を示して講演を終えた。
質疑応答では、国際情勢が環境問題に与える影響についての議論もなされた。環境政策に懐疑的なアメリカのトランプ大統領の再選や、ロシアのウクライナ侵攻により軍事費に各国のリソースが割かれる中で、環境政策は実現されるかを尋ねられたところ、一刻も早い停戦を呼びかけつつ「未来に向けた国際的な協力が環境問題を含む課題解決に不可欠」と改めて強調した。(唐)