〈書評〉 広河隆一著『パレスチナ新版』―パレスチナを知るための一冊―(2009.02.16)

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本書ではパレスチナ問題を、近代以降の歴史を振り返れば理解できるもの、と定義し、19世紀後半以降のパレスチナ史を概説する。普段のセンセーショナルな報道に接するだけではイマイチよく分からない、パレスチナ情勢の背景が、理解できるように書かれている。歴史を知るともに、漠然と描かれている、この紛争をあたかも宗教紛争かのようにあつかう言説。どっちもどっち、と扱う言説、これらに対し違和感がもたげるはずだ。

そこでは、ユダヤ人も自分のための国を作るべき、とのシオニズム運動はユダヤ人社会の主流派では決してなかった。むしろユダヤ人のパレスチナへの入植は、欧米による中東植民地戦略の一翼を担うものだった。「民なき土地に土地なき民を」とのスローガンとは裏腹に、パレスチナには多くのアラブ系住民がおり、そこへの大規模な人口流入は必然的に対立を生むものであった。1948年の国連パレスチナ分割決議は、それまでパレスチナ全域の7%しか所有していなかったユダヤ人に56%の土地を与えるものでアラブ系住民にとっては決して容認できなかったものであることが明らかにされる。

その上で、80万人ともいわれる難民を生み出した「ナクバ(大災害)」建国以来60年に渡って続く、イスラエル政府による一貫した、パレスチナ人の追放の歴史が語られる。パレスチナ人側も、初めから武力を用いたのではなく、他のアラブ諸国の助けを待ち、耐え忍んでいたのが、第三次中東戦争の失望から、自力での解放を目指す武装闘争が生まれた。それでも武力一辺倒ではなく、PLOの主流派ファタハが「48年決議でのユダヤ人国家承認」と、67年戦争によって「占領」された土地のみでパレスチナ国家を作るとの路線変更(それは、大幅なイスラエル政府に対する譲歩なのだが)を行った、という苦難の歴史を歩んできたのが分かる。

この結果占領地の一部のみで先行的に自治を開始したのが93年の「オスロ合意」なのであるが、結局これすら、イスラエル政府は占領地の中にさえも入植地を作る事で一層の領土拡張を図り、はなから守る気などなかったこと。その中で絶望したパレスチナ人青年による自爆テロが発生するようになった…。

文章自体は、淡々と進むのだが、その裏には、40年間一貫してパレスチナ問題を追ってきたジャーナリストである著者の、イスラエル政府に対する怒りと、それでもなお希望を持って日々を生きるパレスチナ人へのまなざしが感じられる。特に1982年にレバノンのシャティーラ難民キャンプで発生した、イスラエル支援の下レバノン人右派民兵によって引き起こされた 虐殺現場の記述(著者はこの現場を世界で最初に踏み入れた外国記者だった)は、思わず目を背けさせられる程凄惨であり、こういった事態が今日に至るまで続いている事に、頭が重くなる一冊である。(魚)

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