ここまで来た、最先端生命科学 第7回京都大学ー稲森財団合同京都賞シンポジウム(2021.03.16)

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2月16日に、京都大学・稲盛財団合同による京都賞シンポジウムが開催された。新型コロナウイルスの感染状況を鑑みて、事前に録画した講演の公開と生配信を組み合わせたオンライン形式で行われた。

京都賞とは、稲盛財団創立者で京セラ名誉会長の稲盛和夫氏の理想と信念をうけ、科学や技術、思想、芸術の分野で人類の発展進歩に貢献した人物に贈られる学術賞だ。京都大学と稲盛財団が共催で年に一度開催している京都賞シンポジウムでは、過去の京都賞受賞者を1名招聘してその業績に焦点を当てた上で、その受賞者を含めた計4名の多分野に渡る研究者が講演・討論を行う。最先端の学術研究の知に触れる機会を学内外に提供することをコンセプトとして設定しており、当日は高校生の参加が目立った。

第7回となった本シンポジウムでは、第26回(2010)京都賞先端技術部門での受賞者である京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授を中心として、中村桂子・JT生命誌研究館名誉館長、山本卓・広島大学ゲノム編集イノベーションセンター長、斎藤通紀・京都大学高等研究院教授が登壇し、事前に収録した技術革新と生命倫理に関するそれぞれの研究テーマに沿った講演を配信した。

最初に中村館長は、地球上に生きている生き物はすべて38億年前に生まれた最初の生命体を祖先とする仲間であるという「生命誌」の観念についてその提唱者として説明し、その中で自然の一部としての人間であることを再び意識すべきだと主張した。続く広島大学の山本教授は、近年急速に発達しつつあるゲノム編集技術について自らの専門的見地を交えて講演した。ゲノムとは生物を構成している細胞のDNAと、それに書き込まれた遺伝情報のことで、このゲノムを「切断」して突然変異を人為的に引き起こすことをゲノム編集と呼ぶ。山本教授はこの技術について農水畜産物の品種改良や医学分野で活用されていることを高く評価する一方、ゲノム編集自体に未だ技術的な問題点が残っていることに言及した上、2019年に中国で発表されたゲノム編集ベビーの誕生を取り上げて倫理的な問題が存在していることも指摘した。

三番目の講演となった斎藤教授は精子や卵子に分化する生殖細胞に関して説明を行いながら、自らの研究分野であるヒト生殖細胞誘導研究の意義と展望を論じた。最後には山中教授が今も残る再生医療・新薬開発分野における金銭的・技術的諸問題とその深刻性を力説した。そしてその問題を解決するために山中教授自らが中心となって進めているiPS細胞ストック事業を紹介し、「iPS細胞を患者さんに適正価格で届けるべく、全力を尽くしたい」と述べた。

個人講演の終了後、全登壇者によるパネルディスカッションが生配信形式で行われた。その場で中村館長から一人の研究者として常日頃から考えていることを問われた山中教授は、「ゲノム編集技術や生殖細胞の技術などは人類にとっては諸刃の剣であり、正しく使えば社会にとって非常に有益な技術となるが一歩間違えるとおかしな方向に行ってしまう。」と話し、研究者が異分野間でコミュニケーションをとって科学技術を適切な方向へと導くことの重要性について言及した。また、参加者に高校生が多かったこともあり、高校生に向けたメッセージを求められた山中教授は、「自分は学生時代に勉強にも取り組んだが、柔道やバンド活動など色々な課外活動にも力を入れることが出来た。若い内は体力が有り余っているので、勉強以外にも多くのことに取り組んでほしい。iPS細胞を使っても時間は戻らない。」とも述べた。最後に参加者からの質疑に対する応答の場を設けた後、4時間に及ぶシンポジウムは幕を閉じた。

本シンポジウムはアーカイブ映像を京都賞シンポジウムホームページ上で公開しており、無料で視聴することができる。(航)

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