〈書評〉川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』鳥を愛してひた走る!(2017.06.01)

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『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』など、なんとも誤解を招きやすくて良くないタイトルである。読めばすぐに分かるが、著者・川上和人氏は決して鳥が嫌いなわけではない。彼に代わってタイトルを訂正しておくと、こうなる――「鳥類学者だからというわけでないが、鳥が大好きだ」。本書には、そんな彼が研究のため鳥を訪ねて幾千里を駆け回った話が多数収録されている。

絶海の孤島や火山の周縁などに棲む鳥の生態は、それ自体がすでに興味深い。そして、そんな秘境へと波を越え崖を越え乗り込んでいく著者の冒険にも心が躍る。しかし、これらにも増して本書を魅力的たらしめているのは、何と言ってもその語り口だ。それを表している本書の表紙絵を見てみてほしい。なにやら骨だけの鳥が著者に覆いかぶさっている。一方には紳士然としたカラスに十字架を掲げる著者の姿。さらに下を見れば、荒波に揉まれる著者へと手を差し伸べる少女がいる。まるで宇宙の始まりを描き出したかのように混沌とした図だが、これが本書である。つまり、鳥の話であることは間違いないのだが、そこに織り交ぜられる例え話や引用がいちいち奇天烈でユーモアにあふれている。鳥に興味がなくとも惹き込まれること請け合いだ。

また本書には、ある種の鳥が絶滅の危機にあることやそんな事態を招いた経緯など、鳥たちを取り巻く問題についての話が随所で顔を出す。複雑多様な生態系の中で、一体何がどう作用して鳥たちを追い詰めていったのか、そして解決の糸口はどこにあるのか――こうした問いに明確な答えを出すことは難しい。しかし人間もまた生態系の一部である以上、決して無関係ではいられない。本書はこういった深刻なテーマを易しい言葉と笑いによって中和しつつ紹介し、問題意識をそれとなく読者に植え付けるという、いわば専門家と大衆との橋渡し役だ。ユーモラスな文で多くの読者を楽しませるとともに、それだけ多くの人々に鳥たちの現状を知らせる役割をも果たしているのだ。

もっとも、著者はただ大好きな鳥のことを書ければそれで良かったのかもしれない。そう思えてしまうくらいに活き活きとした筆勢である。(賀)

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