〈書評〉待鳥聡史著『代議制民主主義』(2015.12.16)

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代議制民主主義とは、有権者が選挙で政治家を選び、選ばれた政治家が政策決定を担う制度で、現在ほぼすべての民主主義政治体で用いられている。著者によると、代議制民主主義には2つの要素がある。1つ目は、有権者の意見を政策決定に反映させようとする要素だ。代議制民主主義では、選挙を通じて政治家を選ぶという方法でこの要素を実現している。2つ目の要素は、少数のエリートに政策を決めさせるものだ。自由主義的要素と呼ばれるこの側面では、政治家に政策決定権を分割して委ねることで、決定をより迅速に行い、社会の利益を実現することを狙っている。政治家の間で政策決定の役割がどう分担されているかを決めるのが、執政制度だ。著者は、選挙制度と執政制度との組み合わせによって代議制民主主義がどのような特徴をもつのかを明らかにしていく。

日本を例にとってみよう。衆議院の選挙制度では小選挙区制が導入されており、執政制度では議院内閣制がとられている。小選挙区制は、一党で過半数を得ることを容易にする。一方、議院内閣制のもとでは政権党が両院で過半数をとってしまえば内閣が提出する法案はほぼ成立する。よって、内閣・与党が大きな裁量と影響力を持ち、選挙と選挙の間には有権者は政策決定にほぼ関与できないのが日本の代議制民主主義の特徴だ。

民主主義的要素と自由主義的要素の2つが相まって成り立つ代議制民主主義では、いつも民意が優先されるわけではない。むしろ自由主義的要素が組み込まれている以上、政治家がいつも有権者の意思に忠実に行動することは求められておらず、政策決定においては政治家個人の裁量が認められるのは当然である、というのが著者の主張だ。代議制民主主義が現在多くの政治体で用いられている理由はここにある。民主主義的要素と自由主義的要素とを均衡させ、どちらかが決定的に力をもつことを防ぐ役割を代議制民主主義は果たしている。

著者は代議制民主主義を「人類の巨大知的プロジェクト」と位置付ける。人類が編み出したこの制度をどう使いこなすか、というメッセージが込められた一冊だ。(B)

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