狭い空間、どう生かす 新交通手段LRTの展望と課題(2007.12.01)

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数多くの名所旧跡を有す、古都京都。今年の秋も多くの観光客が国内外から訪れたことだろう。しかし、京都にはまた、慢性的な交通渋滞という問題もある。その解決策として現在注目されているのがLRTである。今回は京都大学大学院工学研究科教授・北村隆一氏、及び京都市都市計画局交通政策室へ取材を行い、京都市におけるLRT(Light Rail Transit)を巡るこれまでのうごきをみるとともに、LRT開通における現状と課題を探った。(義)

◇路面電車発祥の地、京都にLRT

京都市は、日本で最初に路面電車が走った都市である。1895年に開通した路面電車は、1930年代を中心に、市民の足として活躍した。しかし、高度経済成長に伴ってマイカーが普及し、バスが大型化して路面電車と遜色ない輸送力をもってくると、路面電車は道路の邪魔者とみなされ、(当時敷道は自動車と併用されていた)バス、タクシー運転手らからの反対もあって、1977年に完全に廃止された。路面電車の廃止は珍しいことではなく、早くから路面電車が開通したアメリカやドイツなどでも、1930~1940年頃に次々と廃止された例がある。しかし、京都市で路面電車が廃止された1970年代において、既に欧米では都市部での新型路面電車LRTへの回帰がみられていた。

LRTは従来のものと違い、専用軌道を走ることによる定時性の向上、騒音・振動の減少、車両の低床化、定員の増大といった改良が加えられている。欧米では公害の解決、空洞化した都心部の活性化、環境への配慮、といった理由により、カールスルーエ(独)、ストラスブール(仏)など、次々と導入がなされ、トランジットモール(公共交通機関のみ通行が許された道路)の導入も組み合わされるなどし、成功を収めた。日本でも富山において2006年に富山ライトレールが開業し、初年度運営を黒字で終え、市民から一定の評価を得ている。

そこで京都市の事情に話をもどそう。廃止された直後から、沿線住民の一部からは路面電車を復活させよう、という声があがっていたが、大きな取り組みにはなかなかつながらなかった。転機となったのは、愛知県豊橋市で開かれた1999年の路面電車サミットに住民の一部が見学に行ったことだった。同サミットは、1993年から路面電車の走る街の持ち回りで、路面電車を活かした街づくりを考えるために開催されている。これがきっかけとなって1999年に「今出川通りに路面電車を走らせる会」(通称今電会)が結成され、シンポジウムや勉強会、見学会などを行うなど、地道な活動を続けた。その活動が実を結び、近年、京都市も導入にむけて動き始めた。

京都市都市計画局がLRT導入にむけてうごきだしたのはここ2年程のことである。市は京都駅・四条河原町など基点がばらけた京都の街において、それらの結節を行う新たな交通政策を模索していた。今電会の活動と商工会議所からの提言を受け、LRTの導入に本格的な検討がなされるようになった。

2006年から、シンポジウム「今出川通の交通まちづくりとLRT」など、市民との意見交換、議論の場を設け、LRTニュースなるものも発行するようになった。

今年1月には今出川通り(北野白梅町~出町柳、約4.1km)にて、専用車道にLRTに見立てたバスを走らせる社会実験を行った。京都市では、この実験でモニターとなった人々をはじめとした市民たちのLRTに関する理解が深まったとしている。いっぽうで、交差点での行き違いや右折レーンの撤去などによる自動車交通への影響,荷さばき車両への対策などの課題も浮き彫りになった。

同局交通政策室では、今のところ事業化の話はでておらず、専門のワーキンググループなどもないが、先ごろ今電会から発展した「今出川通りにLRTの実現を推進する会」(新今電会)にもオブザーバーとして参加しており、出来る限りの協力をしていきたい、と話している。

◇今出川通が焦点に

では、都市空間を専門に扱う研究者の眼にLRTはどのように映るのであろうか。京都市の公共交通に通じており、今電会のシンポジウムで講師として招かれたこともある、京都大学大学院工学研究科都市社会工学教授・北村隆一氏は、LRT導入のメリットを道路交通空間の効率的利用に求める。

「日本ではマイカーの普及以来、駐車場の増設などによって、いかにして渋滞を緩和するかという点が交通政策を考える上での重要事項とされていたが、そもそも輸送の際の1人あたり占有面積の高い自動車は、人工密度の高い都市に適した交通手段ではなく、従来の自動車志向の発想を改める必要があるのではないか。」と北村氏は話す。

前述のように、京都市において次第に加速しつつあるLRT導入のうごきだが、無論課題も多くある。中でも住民の理解を得ることが最重要だ。1月の社会実験の際のアンケートでは、沿線の商店経営者の約7割が、LRT導入に反対しており、「観光客にとってはいいが、住民にはメリットはない。」とする声もきかれる。

また、実験中には室町自治連合会の人々が横断幕を手に車線減少に伴う交通渋滞や、沿線の商店の荷さばきの影響、渋滞に伴う集客への悪影響、利用客減少に伴う赤字経営を理由に断固反対を訴えた。また、現在主に検討されているのは、今出川線(北野白梅街~出町柳)だが、「今出川通りは狭く、LRT導入自体には賛成だが今出川通りに通すのは反対だ。」とする意見もある。

市民のみの活動から市がうごくまでに至ったのは特記すべきことではあるが、市民生活に大きな影響を与えることである以上、住民の声を無視するわけにはいかない。

地下鉄という失敗例もあることだし、無理やり話をすすめるのではなく、住民たちと粘り強く話し合いの場をもち、導入の是非を慎重に見極めていく必要があるだろう。果たして新今電会が開通目標とする2010年までにどのような活動がくりひろげられるのか、注目される。

《本紙に写真掲載》

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