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琉球遺骨 京大に対話の要請書 遺骨の研究倫理を問う

2024.08.01

琉球遺骨 京大に対話の要請書 遺骨の研究倫理を問う

横断幕を掲げる参加者たち=京大時計台前

京大が保管する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟の原告らは7月26日、京大の湊総長と椹木副学長(研究倫理担当)に宛てた要請書を京大の法務室長に手渡した。▼原告や支援者との話し合いの場の設置▼遺骨の取り扱いに関する倫理指針の提示▼遺骨の返還と謝罪の3点について、9月2日までの回答を求める。

抗議活動と要請書手交には、原告で龍谷大教授の松島泰勝氏ら約20人が参加した。参加者は時計台前で集会を開いた後、「京都大学は盗んだご先祖の遺骨を元の墓に返せ!」などと書いた横断幕を広げて本部棟まで行進した。通りかかった学生がちらちらと目をやる姿もあった。本部棟の入口は通常施錠されており、昨年5月の抗議集会では代表者だけが建物に入ったが、京大は今回、全員を建物に迎え入れた。その後、代表者が要請書を読み上げ、京大の法務室長に手渡した。法務室長はこの間、特に何も発言しなかった。

原告らが京大に倫理指針の提示を求めた背景には、米国人類学会の「遺骨の倫理的取り扱いに関する委員会(TCETHR)」が今年6月に公表した報告書が、親族などの「十分な情報を得たうえでの同意がなければ、遺骨の研究も展示も行うべきではない」という指針を示したことが挙げられる。同委員会は、琉球遺骨の問題も含めた世界的な調査をしていた。

本紙が京大に対し、▼湊総長と椹木副学長は要請書提出及びその内容を認識しているか▼指定された期日までに返答する意思はあるか▼高裁判決以降、大学として遺骨の取り扱いについて学外の機関や個人と話し合ったり、学内で再検討したりしたかの3点を尋ねたところ、一律で「個別案件及びその対応についての回答は差し控え」るとの回答を得た。

◆琉球遺骨訴訟
京都帝国大学の研究者が1929年に沖縄県今帰仁村の百按司墓(むむじゃなばか)から持ち出した遺骨の返還を求め、墓に祀られた王族の子孫らが京大を訴えた訴訟。大阪高裁は23年9月、請求を退けたものの、「遺骨は、ふるさとで静かに眠る権利があると信じる」「持ち出された先住民の遺骨は、ふるさとに帰すべき」「適切な解決への道を探ることが望まれる」とも付言し、注目を集めた。原告は「歴史的な判決」と評価し、これを確定させるため「積極的に上告しない」判断をして、訴訟は終結した。

京大の法務室長〈左〉の前で要請書を読み上げる支援者ら〈右〉=本部棟


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