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〈展示評〉浪漫の系譜 大解剖 京都文化博物館『日本の巨大ロボット群像』展

2024.07.16

〈展示評〉浪漫の系譜 大解剖 京都文化博物館『日本の巨大ロボット群像』展

合体を解説する迫力のある展示

「ロボットアニメ」と聞くと何を思い浮かべるだろうか。『鉄人28号』、『マジンガーZ』といった往年の名作や、今なお続く『ガンダム』シリーズ。思い浮かべるロボットは人によって千差万別だろう。7月6日から京都文化博物館(中京区)で、特別展『日本の巨大ロボット群像―鉄人28号、ガンダム、ロボットアニメの浪漫―』が開催されている。日本アニメーション史において一時代を築いたロボットアニメの変遷を、多様な模型やイラストによって辿ることができる。本展示は全7つに章立てされており、それぞれ異なった視点から巨大ロボット文化に迫る。

会場に入ると、実際の街に悠然と立つ巨大ロボットの写真や映像が並ぶ。第1章のテーマは『現実化した巨大ロボット』。近年、巨大ロボットを「現実化」する活動が各地で進められた。2009年には東京お台場に全高18㍍のガンダム像、神戸市には全高15・3㍍の鉄人28号像が建造された。鉄人28号像は阪神・淡路大震災からの復興のシンボルであった。鉄人28号の変遷に着目するのが第2章だ。アニメ『鉄腕アトム』が放送開始した1963年、漫画『鉄人28号』もアニメ化された。展示会場では、鉄人28号の意匠や作風の変遷と、大阪万博や東日本大震災といった日本の情勢を同時並行的に見ることができる。開通直後の東海道新幹線を始めとした最先端の技術が作中に登場し、当時の少年少女を魅了していたことがわかる。一方、2007年に公開された劇場版では、元特攻隊員の復員兵や東京に残った不発弾が登場するなど、社会派の内容を帯びた。現代において、アニメーションが娯楽のみならず、多様な表現のメディアとして用いられるようになったことが窺える。

第3章は「搭乗・強化・合体・変形」に焦点を当てる。ロボットアニメにおいて合体や変形は「お約束」である。展示では、そうした「お約束」が多様な変化をもって登場していたことがわかる。例えばアニメ『マジンガーZ』での、巨大ロボット・ダイアナンA(エース)にヒロイン・弓さやかが搭乗するシーン。バイクに乗った彼女が合図をかけると、ダイアナンAの後頭部から地面に向けて光線が発せられる。その光線の上をバイクが駆け上がりダイアナンAの頭部に合体することでバイクがコックピットになる。こうした、近年のロボットアニメには見られない手法に、「古いのに斬新」という逆説的な発見を得られる。

ロボットアニメを語る上で『機動戦士ガンダム』の存在を欠かすことはできない。第4章ではガンダムに特化した企画が催されている。床一面に巨大なガンダムが実物大に作画された企画「ガンダムを歩く」は圧巻だ。ガンダムの各部で登場人物が作業をする場面の解説も設けられている。登場人物さながら、全長18㍍のガンダムの大きさを体感しながら歩くのも良いだろう。同フロアには、セル・アニメーションの構造を3次元的に解説した展示もある。これは、1つの場面について、背景や登場人物、より近くの物体などを分けて描き、順番に重ねることによって遠近感を描出する技法である。しゃがんで見たり横から覗き込んだりと、アニメに詳しくなくともアニメ技術への理解を深めることができる。

セルアニメの3次元的解説



1980年代、ロボットアニメ界ではロボットの内部構造を図解する動きが進んだ。玩具のパッケージや雑誌などでロボット内部の精密な機械構造が露出すると、見ている者は「あるかもしれない」とリアリティーを感じる。第6章では「内部メカの図解」に迫る。壁に掛けられたイラストや、ショーケースに並ぶ模型はどれも内部を露出したものばかり。一部の模型は、修理の際に開閉されるハッチだけが開いたものもある。今にも作業員が駆けつけて修理が始まりそうなリアリティーが如実に表現されている。

ロボット構造の精密な描画が進む一方、1980年代後半にはロボットアニメは飽和状態を迎え、一部のマニア向けの産業へと変貌していった。しかし、反動として、鉄人28号に回帰するようなデザインや、現実離れした「荒唐無稽」なロボットも登場し始めた。巨大ロボット文化は一夜にして咲き誇ったものでもなければ、一筋の街道を経て現代に至ったものでもない。ロボットアニメ文化の一様でない進化を目撃してほしい。会期は9月1日まで。月曜日(8月12日を除く)及び8月13日休館。入場料は一般・大学生1800円、中高生1300円、小学生700円、未就学児無料。愛知・福島での開催も予定。(燕)

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