文化

〈腹が減っては〉脱サラ店主が作る「美味」 讃岐うどん処 味美庵

2024.06.16

〈腹が減っては〉脱サラ店主が作る「美味」 讃岐うどん処 味美庵

うどんと野菜かき揚げのセット。野菜の美味しい場所を連想し、メニュー名は「大原」

京大から志賀越道を鴨川に向かって進むこと5分。住宅街の中にポツンと一軒、うどん屋がある。その店名は「味美庵」。庵長の中川誠さんによると、「味美」は「美味しい」からとったが、漢字の並びが逆であるために、反対の意味に取られかねない。そこで打消しの接頭辞「庵(=UN)」を加え「味美庵」としたという。

お品書きには京都の地名が連なる。特に人気なのは清水と嵯峨野。清水はぶっかけうどんとエビ天に、ちくわ天といなりのセット。嵯峨野はカレーうどんとごはん、唐揚げ3つのセットだ。「遊び心でメニュー名をつけました」。冷たいぶっかけを提供するところから水の綺麗な場所を連想して「清水」、嵯峨野カレーの語呂の良さから「嵯峨野」と命名した。

最初からうどん屋をやろうと思っていた訳ではなかった。「世の中に喜ばれるようなことをしたい」。退職後の生活が不安だったこともあり、56歳で脱サラして自宅で妻と一緒に営業できそうな職種を探した。ペットショップ等の販売業も検討したが、うどんに一番可能性を感じた。素人が参入しても成功率が高いこと、讃岐うどんブームが続いていたことも後押しした。

香川のうどん学校に通って基礎を学び、大阪の船場の店で2カ月修行した。5種類の鰹がブレンドされた鰹節で、讃岐うどんの出汁をアレンジ。独自の「関西風讃岐うどん」を完成させ、2012年に店を開いた。

出汁は創業当初から変えていない。小麦粉は香川のメーカーから、水は「管理されていて、同品質を期待できる」とあえて水道水を使う。うどんの生地を伸ばして団子状にし、熟成させてまた伸ばす。前日、そして当日の朝4時から、この「鍛え直し」と熟成を何度も繰り返してうどんにコシを出す。こうしてできたうどんを「日本一堅い」砥部焼の器に入れて提供する。薬味としてネギとゴマ、それに「あっさりして口の中をさっぱりできる」と生姜も添える。間接照明にもこだわった。温かで優しい光は隠れ家のような雰囲気を醸し出す。

大学生や会社員で連日賑わう味美庵。中川さんは「店の前にあるお地蔵さんのおかげかな」と感謝した。「香川でもこんな美味食べたことない」。お客さんの嬉しい声を胸に、今後もうどんを作り続ける。営業時間は11時30分から14時30分まで。平日のみ営業。(郷)

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